メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

本のはなし

円地文子『食卓のない家』と沢木耕太郎『テロルの決算』、そして「加害者家族の罪と罰」について

先週、続けざまに読んだ2冊の本が驚くほど似通っていた。 1冊目は円地文子『食卓のない家』。 食卓のない家(新潮文庫) 作者: 円地文子 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/03/11 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 学生運動にのめり込ん…

鹿島茂『衝動買い日記』、文学者の小市民的物欲に笑って共感

衝動買い日記 (中公文庫) 作者: 鹿島茂 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2012/12/19 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 鹿島茂氏の書いたものはANAの機内誌「翼の王国」連載の「稀書探訪」を機上で読む程度であり、氏への印象も「フラン…

せなけいこ『ねないこはわたし』を読んで、つらつら

ねないこはわたし (文春e-book) 作者: せなけいこ 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2016/07/29 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 物心つくかつかないかの幼少時に読んで(もしくは読み聞かされて)強く印象に残っている本はそう多くない。…

最初の一年に贈った本たち(備忘)

一昨年12月に生まれた友人の子が先月で1歳を迎えた。 わたしにとっても思い入れのある相手でもあり、「出産祝いに本が欲しい」というリクエストに嬉々として、毎月誕生日を目処に、本(一度DVDも)を贈っている。2015年1月〜12月に贈ったものの一覧を、備忘…

電子書籍で懐かしい漫画を読み返している

ただ活字を読むためのものだと思っていたkindleで漫画を読むことを覚えて以来、かなりの漫画を読んでいる*1かつて読んで好きだった漫画、気になって手を出さずにきた漫画、新たに友人に勧められた漫画。24時間端末とWi-Fiがあれば、どこにいようと手荷物を気…

さくらせかい『いしゃがよい』、家族について絆について

しばらく前に友人が子どもを産んだ。 彼女はひとりで産んで、ひとりで育てることを選んだ。 遠く離れたわたしは何もできないけれど、せめて毎月一冊の絵本を贈ることにした。その子がいつか何かにぶつかったとき、ひとりでも多くの人が自分を気にかけていた…

松本大洋「Sunny」、言葉と居場所と

久々に読んだ松本大洋の漫画、「Sunny(現在5巻)」が素晴らしい。1970年代の児童養護施設を舞台に、そこで生活する《それぞれの事情によって親と暮らすことができない》子どもたちや、彼らをとりまく大人の姿が、生き生きと細やかに痛々しく、でも温かく描…

がんばらなくていい本のアプリ「Stand」を使ってみました

このところいろいろなメディアで取り上げられているアプリ「Stand」を使い始めた。 本のアプリStand Takayuki Inoue ソーシャルネットワーキング 無料 これまでに読書(管理)系のSNSだと、ブクログやメディアマーカー、読書メーターなどに手を出しては長続…

ヘミングウェイのあれが食べたくて

少し前に、小説に出てきた食卓を再現した本を紹介した。 Dina Fried『FICTITIOUS DISHES』、憧れのあの味そしてあの「奇妙な味」も - メトロガール まったくおいしくなさそうな「迷食卓」も混ざった面白い本だったけれども、この中でひときわ食欲をそそった…

山本直樹『レッド』、結末を知る物語と解けることない「なぜ」

山本直樹『レッド』を一気に読んだ。 連合赤軍を題材にとる、限りなく事実に即した「フィクション」漫画。そもそもの事件自体の凄まじさは当然ながら、漫画としての濃度にすっかり打ちのめされている。 レッド 1969?1972(1) 作者: 山本直樹 出版…

駅前の小さな本屋さんで本を選ぶときの感覚と似ている

(※最近Paperwhiteの調子が悪いので、なんでもiPad miniで読んでいます。) Kindleのコレクションを整理していると、「なんでこんな本買ったんだろう」と思う本がちょこちょこ紛れている。ごくまれに「極めて面白くなかった本」もあるけれど、たいていの場合…

角田光代、穂村弘『異性』、(そして不要な自分語り with alcohol)

誰よりもわたしをよく知っている友人から少し前に「絶対読んで」と勧められた。 異性 (河出文庫) 作者: 角田光代,穂村弘 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2014/11/06 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 人が人に恋するには「隙」が必…

本当はわたしだって、わがまま言いたい(いやいやえん|中川李枝子作、大村百合子絵)

友人が子どもを産んだので、出産お祝いとして毎月1冊本を送ることにした。絵本や児童書は嫌いでないとはいえ、特に乳幼児向けの絵本は、自分が読んでいた頃の記憶がない分、子育てをしたことのないわたしにとっては判断基準がなく、選ぶことがなかなか難し…

「難しい小説」って、なんだっけ?

埴谷雄高『死霊』を読みはじめている。少し前にKindle版が20%割引されていたので、つい買ってしまった。惑わされないつもりでいても割引というのは魅力的な制度で、そうでもなければ他にも手をつけるべき本は山ほどあるにも関わらず、あえて時間のかかりそ…

ZOMBIES HATE STUFF|Greg Stones

Zombies Hate Stuff作者: Greg Stones出版社/メーカー: Chronicle Books発売日: 2012/03/21メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (1件) を見るゾンビの「嫌なもの」「平気なもの」「すごく嫌なもの」「大好きなもの」を、淡々と紹介するだけの絵本。…

毎日あっちには

140字を何度も書けるのに、こっちには何も書けないなんて、やっぱりおかしいよね。 だから毎日、少しでも。Sticky Monsters作者: John Kenn Mortensen出版社/メーカー: Square Peg発売日: 2012/11/01メディア: ハードカバー購入: 1人 クリック: 6回この商品…

ジョナサン・サフランフォアそしてリチャード・パワーズ

囚人のジレンマ作者: リチャードパワーズ,柴田元幸/前山佳朱彦出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2007/05/24メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 63回この商品を含むブログ (56件) を見るエブリシング・イズ・イルミネイテッド作者: ジョナサン・サフラン…

戯曲を読む

シェイクスピア全集 (〔22〕) (白水Uブックス (22))作者: ウィリアム・シェイクスピア,小田島雄志出版社/メーカー: 白水社発売日: 1983/01メディア: Perfect購入: 2人 クリック: 3回この商品を含むブログ (9件) を見るシェイクスピア全集 (〔4〕) (白水Uブッ…

La Dispartionな日々

水曜の晩、少し早く帰宅できたことに浮かれていたせいか、パソコンにチャイをこぼした。量は少しだったし、すぐに拭き取ったので大丈夫だろうと(実際その後普通に使えていた)放っておいたのが失敗だった。翌朝起動したところ、ある特定の、子音が割り当て…

Kindleの使い勝手

まだ使い始めて半年ながら、わたし自身は、「DL購入した本を読む」という、ある意味一番スタンダードなやり方だけで電子書籍と付き合っている。「自炊」を含む外部PDFの取り込みも、一度もやったことがない。日本展開後にKindle購入を考えている人もいるかも…

Kindle日本展開にあたって

amazon.co.jpで、いよいよKindleの取扱いがはじまる。ハードのみでなくコンテンツ販売の準備も整ったということなんだろう。すでにKindleを利用しているわたしも、海外ストアでアカウントを持っているユーザーへの対応がどうなるのか等々を気にしながら詳細…

ある詩人との会話(詩人と小説家について)

「先生はさ、小説家になろうと思ったこと、ないんですか?」 「ないね」「じゃあ、詩人になるっていう意識は?」 「あった」「ふうん。詩人と小説家って、何が違うのかな」 「詩人と小説家って全然違ってさ、小説家は描写しなきゃいけないんだよ。たとえばこ…

まだちゃんと向き合えないでいる

十年以上前の話だけど、大学で防衛大を中退してきた女の子と友達になった。わたしが九州出身だということを知った彼女は、無邪気に「防大って、すごく九州の人が多いんだよね」と言った。端的に言葉にすると誤解を生むかもしれないけれど、そのときわたしは…

ライティング・マシーンーウィリアム・S・バロウズ|旦敬介

ライティング・マシーン―ウィリアム・S・バロウズ作者: 旦敬介出版社/メーカー: インスクリプト発売日: 2010/11メディア: 単行本 クリック: 13回この商品を含むブログ (4件) を見る昨年末から読み始め、のんびり進め、ようやく読了。中南米文学の翻訳で知ら…

本が好き!

本が好き! 本屋さんなら何時間うろついても飽きないし、積み重ねた本を一日中ごろごろしながら捲りつづけるのが至福!……という人間だったはずなのに、本好きどころか、最近はまったくといっていいほど本を読めていない。テレビの隣に読み終わってない本置き…

僕のエリ 200歳の少女|トーマス・アルフレッドソン(と、その原作小説『モールス』)

スウェーデン映画については、ベルイマンからロイ・アンダーソン、ルーカス・ムーディソンなど、強い印象を持つ監督が多い。そのどれもがアートムービー的であるなか「ミレニアム」ではスウェーデンにもこんなエンタメ映画があるんだ、と驚きもした。そんな…

ザ・ロードふたたび

映画「ザ・ロード」を初日に観てきましたが感想はまた改めて。「少年の成長」よりは「家族」というものにフォーカスしていたという意味で、原作とはイメージの違う部分は当然あったけれどなかなかよくできていたと思う。「善き者」「火を運ぶ」の重要性と意…

ふたつの「プレシャス」

とても楽しみにしていたので、映画「プレシャス」は公開初日にシネマライズで観た。読み書きもできない黒人少女プレシャスは16歳なのに中学生で、しかもその中学校すら退学になってしまう。理由は「2人目の子どもを妊娠しているから」。12歳のときに産んだ…

浅倉久志さん、あなたに神のお恵みを

浅倉さんは他にもたくさんの海外SFを日本に紹介しているし、わたしは飛田先生の訳したヴォネガットも大好きだということを述べた上で、それでも言わせて欲しい。日本の読者は、浅倉久志と伊藤典夫の訳でカート・ヴォネガットを読むという非常なる幸運に恵ま…

ブラッド・メリディアン|コーマック・マッカーシー

ブラッド・メリディアン作者: コーマック・マッカーシー,黒原敏行出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2009/12/18メディア: ハードカバー購入: 8人 クリック: 118回この商品を含むブログ (51件) を見る「判事」の初登場シーンのおそろしさ、禍々しさ、そして鳥…