メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ホルスト・ヤンセン展へ

実は、中央線を吉祥寺より先まで行ったことがない。うっかりすれば山梨に行ってしまうのではないかと不安な車中、なんとか無事駅に着いたかと思えば、今度は街で迷う。標識もポスターも出ているのに、目的地である八王子市夢美術館に」たどりつくまで、1時間の上かかってしまった。
甲州街道沿いの、一見高層マンションにしか見えない「ビュータワー」という建物の2階に、美術館はあった。郊外で、一般にそう知名度が高くない画家の展覧会とはいえ、連休だからある程度の混雑を覚悟していた。ところが、エントランスに足を踏み入れてあまりの静けさに反対に怖じ気づく。デパートの催事場を思わせる、シンプルな、こじんまりとした展示スペースには、全部合わせても5人くらいしか、お客さんがいなかった。

鼻先がくっつくくらい、顔を近づけて線の一本を確かめることと、離れて立って作品全体を眺める作業を延々と繰り返した。じっくりと一周して、それから(若干興味の薄い静物と風景をとばしながら)また2回順路を巡った。

本当に、感想を書こうにも、悔しいくらいに言葉にならない。

初期の木版はなんでこんなに陰惨なんだろう。何を描いたって、葬列にしか見えやしない。どうしてヤンセンはこんなにもパラノイア的に、しかも醜悪に、自らの顔を描き続けたんだろう。髑髏と死神は、遊び回る子どもたちのなか、自画像のなか、あらゆる場面に姿を現し、少女が交わるのはやはり夢魔や死神であるように見える。でもヤンセンは、100歳までだって「生きること(=描くこと)」を熱望していた。生と死、同時にとりつかれることは不思議にも思えるし、当然にも思える。