メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ものがたり、2つ

川上弘美「海石」
電車の待ち時間に、立ち読みしていた雑誌「ku:nel」にて。ほんの3頁の掌編なのだけれど、とんでもなく美しい、胸をかきむしられる恋愛小説であり、ファンタジー小説だった。海の底の細い穴の中に住む、にょろりとした、肉を食む、「あたしたち」。
生々しい現実感のある設定より、得体の知れない生き物からどうしようもない切なさやいたいけさを描き出すときのほうが、この人の本領が発揮される気がする。確か短編集「蛇を踏む」収録だったっけ、毛玉みたいな、臆病な生き物の話。あれも良かった。

もう一冊。
評判高いカズオ・イシグロ「わたしを離さないで」。

わたしを離さないで

わたしを離さないで

物語の本質は、SF的な設定(それ自体はさして特異なものともいえない)にあるわけではないのだろう。3人の男女の人生は、途方もない絶望と愛情に満ちている。
泥まみれになって叫ぶ少年に、まっすぐ歩み寄る少女。ボーイ・ミーツ・ガール、もうそれだけで持って行かれてしまう。