メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

僕の緑の芝生|ギュンター・グラス

ごく短い散文や小説を集めた一冊。

「お話」部分は、正直物足りない。こういったフラグメンツを寄せ集めて組み上げるところにこそ、グラス作品の魅力があるように思える。印象に残ったのは、「わが子マックス」の、死んだ子を弔うよりはそのまま蛆をわかせたい、自分もその蛆の一匹になりたい、わが子と同化したい、という気持ち悪くも切ない描写。「ぼくの町の一市民ーーカーニヴァルの王子」は、町のお祭りでプリンス役に選ばれた人間が実は元ナチだった、という話で、今読むと複雑。

「散文」部分はとてもよかった。特に巻頭の2編が。スペイン滞在の情景を切り取った「僕の緑の芝生」。蟹を胸に押し当て、その鋏に切り裂かれることによって自殺をする少女や、身の丈2mの蝸牛を相手にする闘牛士など、どこかシュールで幻想的な光景が、鮮やかに描かれている。「五羽の長い脚の鳥」は、童話的、というか童謡的。五羽の鳥が、生き別れの七羽の鳥に巡り会うべく旅をする冒険譚なのだけれど、「散文寄りの詩」ということで、訳文も非常にテンポがいい。マザーグースみたいな、声に出して読みたくなる感じ。