メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

マジック・フォー・ビギナーズ|ケリー・リンク

昨年「スペシャリストの帽子」を読んで大好きになった作家の短編集。前作で解説を書いていた柴田元幸氏が、今回は翻訳も手がけている。自分の中であまり「SF/ファンタジイ」のイメージが強くなかったため、発売日に文芸の棚をくまなくさがして、見つからないので途方に暮れた。その後、SFの棚に目をやると、目立つ場所にしっかりディスプレイされていた。

前作同様、不安で不穏で、滑稽でロマンティックな小説が並んでいる。至極真剣に深刻な顔をしながら、テクストは無辺世界へジグザグに突き進む。短編集とはいえ、前作より一作一作が長いため、文章の不条理さとあいまって、読むのには少し、体力を必要としたように思う(敢えて言うならば、「妖精のハンドバッグ」「猫の皮」あたりは、童話的王道に近く、読みやすかった)。最終的にここで描かれる不安は、幼子のものだ。日暮れどきにただひとり取り残されて、帰り道を失った子どもの、所在なく立ち尽くす、泣き出しそうな(けれど泣くことすらできない)、そういう不安の小説が並んでいる。

「君のこと覚えていられるように、お話をしてくれよ」
「どんな話?」チアリーダーは言う。
「怖い話がいい」と悪魔は言う。「笑えて、怖くて、悲しくて、ハッピーな話。何もかも揃っているのがいい」。