メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

月と菓子パン|石田千

月と菓子パン (新潮文庫)

月と菓子パン (新潮文庫)

移動中に軽く読めるものが欲しくて購入。「エッセイ」というより「随筆」「読みもの」という表現がしっくりくる。生活系、ほっこり系の枠にあまりにしっくりとはまりきるので、ちょっとだけ、これは天然なのかあざとさなのかと穿ってしまったのはわたしの性格の悪さだ。

細やかな視線はいかにも女性らしいように感じられるが、読んでいる最中にふと筆者の性別に自信が持てなくなり、プロフィールを捲ってしまった。文章の湿度が低いから、ユニセックスにも受け取れるのかな、と読み進め、気づく。一人称の欠落。これも、理由のひとつだ。

以前はてなで「男のブログは『俺が』、女のブログは『わたしは』」だというような趣旨のエントリーを読んだことがある。ネットで文章を発表する際、男の人は外界へ主張する「俺が」というスタンスになりやすく、女性は閉じた箱庭の中で内に向けて「わたしは」と頑な自己を表現しようとする。読んでいて、なるほどと思った。その点この本では、完全に「わたし」という言葉が欠落している。そのせいか、思ったこと、感じたことばかりを書き記しているのに、不思議なほど自己主張が感じられない。まさしく飄々と、淡々と。

ちなみに内容、おいしそうな食べ物がたくさんでてきたのでお腹がすいてしまった。