メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ブラック・ヴィーナス|アンジェラ・カーター

ブラック・ヴィーナス (Modern&Classic)

ブラック・ヴィーナス (Modern&Classic)

フェミニズム文学やマジックリアリズムの文脈で語られることの多い作家だという。初読なので、様子見に短編集を選んだ。

フェミニズム文学」というのは、不勉強ながら定義としてよくわからないのだけど、肉体的にも精神的にも解放された女性を描いている、ということでいいのだろうか。ジェンダー論の講義を思い出すと、どうしても男女同権運動的なものをイメージしてしまう割に、「フェミニズム文学」と呼ばれる小説ではそこまで強くは思想的なものを感じたことはない。

同じマジックリアリズムの潮流で語られる中で、英国のものと南米のものでは手法が異なっているから面白い。南米のものでは幻想的な世界をゼロから組み立て、その綿密さのなかにリアリティが生まれる(現実の出来事に着想を得ている場合でも、そこには「題材の解体」から「再構築」の過程があるように思える)。英国のものは、カーターにしろウィンターソンにしろ、まず既成の現実ありきで、そこから想像の翼が生えていくような印象を受ける。そして、面白かったのがこの本の解説頁で、日本におけるマジックリアリズムとして京極夏彦(の、おそらくは妖怪シリーズ)が挙げられていたことだ。好んで読んでいたのはローティーンの頃で、当時のわたしは「マジックリアリズム」などという言葉すら知らなかったけれど、そう言われて思い出してみれば、確かにそうとも言えるのかも。そして、京極夏彦の手法はまた、南米のものとも英国のものとも異なっている。マジックリアリズムというのは非常に土着的な文学潮流なのかもしれない。

奔放で軽快、でも繊細。登場する女性は本当に強くて解放されているのかな? なんだか、失ってばかりだった。