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愛その他の悪霊について|ガルシア=マルケス

愛その他の悪霊について

愛その他の悪霊について

好きなタイトルの本は? と訊ねられたなら、間違いなく挙げるであろう一冊。旧版のそっけない装丁もあれはあれで(いかにも翻訳小説らしく)気に入っていたけれど、せっかくなので買い直し、ついでに再読。

両親から見放され、黒人奴隷たちのあいだで育った少女シェルバ・マリアは狂犬に噛まれたことから「悪魔憑き」と噂される。奴隷たちとの生活で身につけた(市民にとっては)異端である風習や言葉が、皮肉にも少女の「悪魔憑き」を人々に信じさせる根拠となる。そして、悪魔払いのため押し込められた修道院の独房で、少女と神父は恋に落ちる。

ガルシア=マルケス小説群のなかでは珍しく思えるくらい、ストレートな純愛物語。独房のなかで、はじめてカエターノがシェルバ・マリアに愛を告白する場面から数ページの美しいことといったらない。とともに、娘が病に伏してはじめて彼女を愛していることに気づく父親の哀しさと、不器用な愛し方も印象的だった。

この小説に出てくる女性はみなアグレッシブで強い。対して男性は優しくロマンチストで、どこか頼りない。ベルナルダに関する記述のおおむねと、洗いながら皿を割るドゥルセ・オリビアは、笑うところでいいんだろうか……。