メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

この世で一番苦手な場所へ行く

歯医者さん。

どのくらい苦手かというと、親知らずを抜いてこのかた、5年ほどご無沙汰している。よっぽどのことがないと足を踏み入れない。

トラウマ形成されたのは幼児の頃、はじめて連れて行かれた歯医者がとにかく怖かった。わたしは嘔吐反射の激しい、すぐに泣く子どもだったので、病院側も手を焼いたのだろうが、ネットでぐるぐる巻きにされ押さえつけられた挙げ句、「開口器」という口を閉じられなくする器具を使われた。ひたすら苦しく、恐ろしかった記憶しかない。

一週間ほど前、右奥歯に膿むような痛みを感じるようになった。噛み締めると、歯茎全体がじんわりと痛い。「放っておいて、神経抜くようになったら、比べ物にならない痛みだよ」と周囲に脅された。自分としても、あまりに歯科医通いのブランクがあいているので(そういえば、歯科集団検診って小学校までだったっけ)、どこか、手の施し用がないほど悪くなっている歯があるのではないかという漠然とした恐怖があった。来春からまた仕事が忙しくなるだろうから、それまでに一度、きれいに歯を治療しておきたい。

自宅から一番近く、平日遅く及び土日診療を行っている歯科医院を選び、悲壮な覚悟でドアを開けた。
最近の歯医者ってすごいんだなあ。待合室も、半個室の診療室も、白と磨りガラスのモダンな内装。目の前のモニターに映し出されるアニメーションで、状態や治療方針の説明をしてくれる。スタッフも皆優しくて、なんだか拍子抜けしてしまった。

結果、虫歯というほどのものはなく、痛みの原因は、先日の風邪で抵抗力が弱った際に口内でも菌が悪さをし、いわゆる歯肉炎を引き起こしているのだろうとのこと。とりあえず歯石除去やクリーニング、マッサージで改善はするだろうとのことで、もう何度か通うことになった。帰り際「何か、削ったりしなきゃいけないような悪いところ、本当になかったですか?」と詰め寄るわたしに、先生も衛生士さんも苦笑していた。でも、怖かったんだもん……。