メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ミスター・ロンリー|ハーモニー・コリン

ハートフルなラブストーリー、みたいな感じで宣伝をうたれていたように思うのだけど、いや違うでしょ。ひりひりと痛い。不器用すぎて、他人の姿を借りて生きることしかできない物真似芸人たちの物語のあいまに、話の筋にはまったく絡んでこない、奇跡を起こす修道女たちの寓話が織り込まれる。

感想がとても書きづらいのは、うまく消化できていないからだと思う。筋自体は、穿った見方をしなければ、わかりやすいものだと思うのだけれど、わたしはまだラストシーンの意味をはかりかねている。修道女の物語はまあ見た通りとして、「マイケル」の結末はあれ、どう受け止めたらいいんだろう。
有名人になりきった人々が、ユートピア的な共同体生活を送るあたりは、視覚的にかなり倒錯していて面白かった。マドンナや、チャップリンや、リンカーンや、法王が、のこぎりをひき、長靴を履いて家畜の世話をする。それを淡々と、現実的なカメラワークで追うのだから、観ていてくらくらする。かと思えばときおりどきっとするような大胆な、ファンタジックな構図があったり。

ストーリーの面では主人公「マイケル」の純粋さ、やさしさには胸を打たれたけれど、やっぱりドニ。あの個性的な顔は年を重ねてますます個性を増し、さらに、アレックス時代と比べるとすっかりたるんだ裸体を堂々と晒す。彼が部屋の隅でひとり「もうまねはしない、だいじょうぶだだいじょうぶだ」と呟きつづけるシーンの壮絶さといったらない。(付け加えるならば、キャストのなかで一番男前なのがカラックスというのもある意味凄い)。

子どものころ、大事にしていた妄想があった。蝶が脱皮するみたいに、自分の背中がびりびり破れて、中からもっと違う、きれいな何かが出てくるのだという夢想。不満があったわけではない。欲しいものは大抵与えられた。愛情ならば過剰なくらい。でもわたしは、その、何の努力も伴わない変身願望をいつまでたっても捨てられずにいた。多分今も。帰り道、そんなことを思い出した。

ミスター・ロンリー [DVD]

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