メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ブラックフォーマルをあつらえる

大人になってずいぶん経つのに、ブラックフォーマルを持っていない。制服の着用が許される年齢のころを思い起こしても、葬祭に参列した記憶はほとんどないので、つまりのところわたしは、身近な人間を失った経験に乏しいのだろう。

そろそろ一着くらいは揃えなければ、という話になり、喪服を買いに出かけた。まずはデパートや紳士服量販店のレディースフォーマル売り場をのぞいてみて、げんなりしてしまう。形式とはいえ、こんな服に片手ほどのお金を払うのは憂鬱でたまらない。

思い立って、アニエスb.に行ってみた。なんとなく、フォーマル使いのできるシンプルなワンピースやジャケットがありそうな気がしたのだ。

アニエスb.が一世を風靡したのはわたしが中学生の頃で、当時の感覚からすれば決して安くはない商品ばかりだったが、好んで小物や洋服を集めた。その後、ブランドとしての流行は去ったものの、シンプルでラインがきれいな洋服は使い勝手がよいため、今でもときどき買い物に行く。

黒いワンピースとジャケットは、フォーマルコーナーのセットアップと比べて二倍ほどの値段だったが、試着してみるとまったくシルエットが違う。すぐさま購入を決めた。さらに(懐具合にとっては)悪いことに、それらの梱包を待っているあいだに、素敵なコートを見つけてしまった。薄手で、襟ぐりがスクエアになっていて、クラシカルなコート。ベルトを絞めれば、ちょっと60年代モードっぽいワンピースのような着方もできる。ちょうどセールで、手の届きやすいところまで価格も下がっている。サイズが38しか残っておらず、合わせてみると身頃がかなり余っていたが、思ったより安くサイズ直しができるということなのでお願いする。仕上がりは一週間後。楽しみ。

そういえば、このあいだ観た「ミスターロンリー」は、アニエスb.が衣装を提供していた。マリリンのドレスは素敵だった。アニエスはもう、65歳になったらしい。思えばフランスの洋服が好きになったのは、このショップがきっかけだったのかもしれない。