メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

もうすぐさよなら、4年間暮らした部屋

四年前の冬。仲介会社のカウンターで「絶対、おすすめです」と、アパートの室内を写した数枚のスナップを見せられた。

連れて行かれたのは、ちょうど、市街地と住宅街が入れ替わる交差点のあたり。マンションやインテリアショップやブティックやカフェに囲まれてそこはまだ空き地だった。先ほど見たスナップと似たタイプのアパートが2ヶ月後に建つのだと言われ、わたしははじめて自分で部屋の賃貸契約を結んだ。

天井が高いところが好きで、ロフトの天窓が好きで、寝ているとときおりこつこつと頭上から聞こえてくる音を、わたしは、屋根を歩く猫の足音だと決めつけることにした。夜の静けさに耳を澄ませば飛行機の音が聞こえてくることもある。

壁紙が真っ白いところも好き。出窓も好き。広さもつくりもなにもかも、ちょうどわたしのサイズにあっていた。キッチンと居室のあいだに扉がないことで得られる開放感をとても気に入っていたし、ちいさな木造アパートであるにも関わらず、不思議と冬でも暖かい。建具とフローリングがチェリーブラウンであることが、唯一の欠点だと思っていたけれど、いつのまにかそんなことも気にならなくなった。こじんまりとした部屋なのに窓が3つもあって、姉はわたしの誕生日に真っ白いカーテンを贈ってくれた。

この部屋は明日、ほとんどからっぽになる。
ほとんどからっぽになってからも二週間くらい住む。
そして、わたしはここを出てゆく。