メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ノーカントリー|ジョエル&イーサン・コーエン

ようやく、コーエン兄弟ノーカントリー」を観てきた。

わたしはコーエン兄弟の映画は好きで、劇場で見逃したものは後日レンタルでフォローしながら、多分全部観ている。すごく芸術性が高いタイプでもないし、だからといってエンタメに絞った作品でもない、まじめなんだかすっとぼけているんだかわからない空気感が好き。あと、アメリカの荒涼とした風景の映しかたが好き(「バーバー」は、なんだかちょっとヨーロッパっぽかったけど)。そしてなにより台詞回しがダントツに上手い。あまりアカデミー向きには思っていなかったので受賞には驚いたけれど、嬉しかった。ちなみにわたしは原作の小説「血と暴力の国」は読んでいないので予備知識ゼロで。

麻薬密売組織の内部トラブルで、組織の人間が壮大に殺し合った(らしい)。荒野に残された死体と麻薬、大金を見つけ、金を持ち逃げした男モスは、残忍にしておそるべき殺人能力を持つシガーに付け狙われることになる。基本的には追われるモス、追うシガー、さらにその後を追う保安官等々をスリルたっぷりに描く映画。とにかくこのシガーが怖い。顔も恐いし殺しかたも怖いし頭の中も怖い。怖いのだけど、まるでロボットみたいに自分の規範に従って猛烈に目的へ突き進む姿は、笑える(治療用品を万引きする隙をつくるためだけに車を爆発させるシーンは爆笑だった)。そして、このうえなく深刻なシーンでも、台詞回しで笑わせる。これもまたいつものコーエン兄弟らしい。「上着を売ってくれ」「シャツを売ってくれ」のシーンと、メキシコへ入国したモスが目覚めるシーンには、会場全体から笑い声が上がっていた。

しかしシガー役もだけれど、あんな変な顔と存在感の役者をいつもいつもどこから探してくるんだろう。「ファーゴ」ではなくこの作品がアカデミー作品賞を取ったのは、トミー・リー・ジョーンズ演じる老保安官が現在のアメリカ社会・そこで起こる理不尽な犯罪について深く悩み苦しんでいる描写があったからなのだろうな。

予告編を観ていたら、クローネンバーグの新作が面白そうで、ミルハウザーの「幻影師」の映画版も、P・T・アンダーソンの新作も良さそう。ダニエル・デイ・ルイスの顔が予告編だけでも十分わかるくらい狂っていた。

ついでに日比谷公園。映画、遅刻しそうになって、ものすごい勢いで駆け抜けました。

余談。後日Rと映画の話をしていて、わたしがいかにシガーが怖かったかを語っていると、彼女はひと言「ああ、あの『変なかつらを被ってがんばってよかったよ〜』って、アカデミーの授賞式で泣いてたひと?」と。一気にハビエル・バルデムのことが可笑し可愛くなってしまった。授賞式観ればよかったなあ。

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