メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ロイ・アンダーソンを2本

ロイ・アンダーソン監督の新作「愛おしき隣人」と、40年前に公開された彼の長編デビュー作である「スウェーディッシュ・ラブストーリー」。せっかくなのでまとめて観てきた。「散歩する惑星」がヒットした、スウェーデンの監督。カウリスマキを好んで観る程度で、わたしはあまり北欧映画には縁がないのだけれど、予告編が面白そうだったので。

まず午後一番の回で観たのが「愛おしき隣人」。あるアパートメントの住人たちの生活を切り取って、ランダムにスクラップしたような映画で、一種の群像劇になるのかな。ゆるーい感じを覚悟していたら、いい意味で裏切られた。

ごく普通の人々の生活は、冴えなくて、ささいな不幸とフラストレーションに彩られている。自らの仕事に絶望した精神科医や、夫婦喧嘩で投げつけられた言葉に深く傷つき仕事も手につかない夫婦や、機嫌の悪い床屋に、上手くいかないビジネスマン。ほとんどアル中みたいな家出志願の主婦に、ロックミュージシャンに実らぬ片思いをする少女。誰もが不機嫌に我が身を嘆く様子を、独特の間や画で、シニカルなユーモアたっぷりに描く。ろくなことはない。けれど結局は、バーのマスターが毎日店じまいの前に言う「ラストオーダーだよ。また明日があるから」というこの言葉がすべてで、これは希望あふれる映画。音楽の使い方がとても良い。

夕方の回で観たのが「スウェーディッシュ・ラブストーリー」。これは凄かった。北欧版「小さな恋のメロディー」と言われ、ずいぶんヒットしたらしいんだけど、今観ても、とても40年前の映画だとは思えない。思春期に差し掛かりつつある、無邪気さの終わり頃の少年少女に訪れる初恋だけでなく、思うようにならない人生を生きる大人たちの情けなくも滑稽な姿まで、胸が痛くなる。

根本的に漂う無常観のようなものは、この作品も「愛すべき隣人」も変わらない。けれど、「愛すべき隣人」が円熟の作品であるならば、これはまさしく初期衝動の鋭さや乱暴さにあふれている。荒削りと言えばそうなのかもしれないけれど、この激しさに触れてしまうと、若さと熱情にはなにをもっても敵わないんじゃないかと思ってしまう。カラックスが「ボーイ・ミーツ・ガール」を撮ったのは23歳。ロイ・アンダーソンはこの映画を26歳で撮った。

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