メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

偶然の音楽|ポール・オースター

偶然の音楽 (新潮文庫)

偶然の音楽 (新潮文庫)

こんなに消耗する小説も、そうそうないような気がする。いかにもアメリカ的ロードムービー的なストーリーだと、冒頭部分にいささかのんびり構えすぎていたのかもしれないけれど、フラワー&ストーンの屋敷に入って以降の息つく暇もない緊張に、読了後どっと疲れが出た。特に後半、ナッティがひとりぼっちで憎悪を募らせるくだりは、爆発の瞬間がいつ来るのかと怖くて仕方なかった。しかし、裏切りつづける物語は、結局のところわたしを強い力で突き放し、終わった。逃げ続けた男の脱出劇、閉塞状況の中でのみ抱くことのできる希望。それにしたって結末はあまりにあっけなく、どう受け止めるべきかという戸惑いはしばらく、もしかしたら永遠に解消されないのかもしれない。

ストーンの作る小さな街の模型や、「イギリスの古城から運んできた石をひたすら積み上げる仕事」等、黙示的な、いかにもポストモダンチックな部分は多いのだけれど、全体の流れとしてはむしろ古き良き王道的アメリカ小説を踏襲している。そのバランスが絶妙。