メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

芝生の復讐|リチャード・ブローティガン

芝生の復讐 (新潮文庫)

芝生の復讐 (新潮文庫)

最初に読んだのは「西瓜糖の日々」で、甘く可憐なタイトルに惹かれたんだった。ユートピア的な情景は幻想的なのに緻密でリアリティに溢れ、文体は簡潔でリズムのよい、美しいながらもすこしへんてこなものだった。そして、作品全体を通して印象に残るのは、糖衣に包まれた破壊と暴力、なんだかくらくらと、吸い込まれるような気分だった。

ここ数年でかなりの著作が復刊されたものの、当時ブローティガンの作品は、絶版につぐ絶版で手に入りづらく、主に図書館で読みあさったように思う。「西瓜糖の日々」「アメリカの鱒釣り」で藤本和子さんの訳文に惚れ込み、実際世の中のイメージとしてもブローティガン藤本和子、なんだろうけど、わたしは高橋源一郎さんの訳した「ロンメル進軍」も好き。これは、丁寧に訳されているだけでなく、なんだか高橋さんのブローティガンを好きな気持ちと、ブローティガンを好きになって欲しいという気持ちが、いっぱいに詰まっているようだったから、そういう意味でも愛おしい。

そういうわけで「芝生の復讐」は、多分再読だったのだけれど、内容はほとんど覚えていなかった。あまり統一感のない短編集で、掌編といってもいいくらいの短さのものが、62編。そういえば、ユアグローってちょっとこの感じと似てるかもしれない。「芝生の復讐」的ブローティガンに、皮肉とナンセンスをこれでもかとトッピングしたら、ユアグロー、なんて言ってしまうのは乱暴かな。

やはり本数が多いだけに、強く印象に残るものと、流してしまったものとの落差はあった。こういう作品集は、やや散漫な印象が残るから、初読にはやはり、それぞれの編は短く読みやすくて、全体としてはゆるりと大河のようなつながりと流れを持っている、「鱒釣り」や「西瓜糖」のほうが向いているだろう。
気に入った作品はたくさんあるけれど、一番は「1/3 1/3 1/3」かな。この作中作の小説は、(ある意味で)傑作だと思う。アメリカ文学の扉!