メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ほとんど記憶のない女|リディア・デイビス

ほとんど記憶のない女

ほとんど記憶のない女

体裁としてはもはや小説といっていいのかよくわからないものを含め51篇。でも、一枚の写真が物語を語り出すように、断片的な言葉の中にだって物語はある。全体として、感情や思考に対して分析的な描写が目立つけれど、不思議とこれが理屈っぽさを感じさせない。自分が他人に対して抱く感情や他人が自分に対して行う行為を分析することが、相手への移入、愛情、同一化を生む。論理的な行為なのに、行き着く先は情念というのは、なんか、いい。

特に気に入って、恋をする人なんかは読んだらいいんじゃないかなと思うのは「理解の努力」「出ていけ」「町の男」「恐怖」。リズムが気持ちよくて、内容にたいした意味は多分ないんだけど、卑猥さだけはこれでもかと伝わってくる感じが面白かったのが「この状態」。