メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド|ポール・トーマス・アンダーソン

日比谷で「ゼアウィルビーブラッド」を観る。P・T・アンダーソンは「ブギーナイツ」以来ずっと大好きな監督で、ダニエル・デイ・ルイスも大好きなので、公開前からとても楽しみにしていたのだけれど、一緒に観る約束をしていた友人となかなか日程が合わず、けっきょくこんなに遅くなってしまった。

3時間近い上映時間の長さを感じさせない内容の濃さに、面白かったし、なにより圧倒された。今までのP・T・アンダーソン作品とはちょっとタイプが違っていて、全体的には古典的大河ドラマ風なんだけど、彼特有のユーモラスで現代的なテンポはしっかり生きていた。モダンな手法のゴシック映画とでもいえばいいのかな。ジョニーの音楽も良かった。それにしたって、あまりに壮絶な展開と、異様なハイテンションを保ったままのエンディング。エンドロール後、同行者とふたりしばし言葉をなくし、「……すごかったね」と。

1900年代のアメリカで、石油王にのし上がって行く男の話で、とにかく映画全体に「欲望」「狂気」「孤独」のもの凄い、どす黒いエネルギーが渦巻いている。「他人を好きになれないから、ひとりになるため十分な金が必要だ」というのが主人公プレインビューが金を求める理由だが、そもそも、成功するためには他人が邪魔だから人を好きになれないわけで、彼の「欲望」と「孤独」の根源について考えると、鶏が先か卵が先かというようなむなしい議論になってしまう。ただ、どちらがどちらの目的であり手段であるにしろ、そのふたつのファクターが互いに互いを増殖させ、最終的に「狂気」に収束してゆく。こういう紳士の皮を被った狂人の演技をさせると、本当にデイ・ルイスはすばらしい。期待どおりの名演技だった。

そして対極をなす狂気を見せてくれたのが、リトル・ミス・サンシャインでもやはり気持ち悪いニーチェ信奉者を演じていたポール・ダノ。今回の役どころは農家の息子かつキリスト教派生の新興宗教の教祖である青年で、デイ・ルイスと激しく対立する。このひとはスタイルはすごくいいんだけども、気持ち悪い役柄が多いだけあって、やはりそういうのが似合う、ぬめっと湿度の高い、ミレーの絵みたいな顔をしている。いつか彼が好人物を演じる日は来るのだろうかと、ひとごとながらちょっと心配。いやいやしかし、本当に素晴らしかった! 観てよかった!

ところで「コレラの時代の愛」映画化の予告編が流れた感想、これはちょっと微妙かも。超純愛ストーリーみたいな予告になっていたのだけれど、個人的にはあれ、そういう話だとは思えない。