メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

家なき鳥|グロリア・ウィーラン

家なき鳥

家なき鳥

インド版「家なき子」といった感じのジュヴナイル。下北沢の「幻游舎」にて購入。

少女コリーは貧しい家の食い扶持を減らすため、十三歳で嫁に出される。しかし、なんと夫は重病の少年で、彼の両親は、息子の命を救えるのはガンジス川での沐浴だけだと考え、そこへゆく旅費を得るため持参金目当てで縁談を計画したのだった。結婚後僅か数日で未亡人となるが、「出戻り」が許される社会ではなく、遺族年金すら姑に取り上げられ、辛く当たられる日々を過ごすコリー。仲の良かった義妹も嫁に行き、文字を教えてくれた優しい舅も死に、ついには姑に置き去りにされ、路上生活にまで身を落とす。

割と視点はフラットで、どの登場人物にも平等に、良い部分悪い部分を描いているから、読んでいて誰のことも憎めない。ヒロインのコリーも、明るく優しい女の子なのだけど、けっこういい根性をしていて、姑に平気で食って掛かってこっそりやりかえしたりもするし、自分が追いつめられているときは他人を蹴落としたりもする。下のカーストを蔑視している描写もある。欧米が舞台のこの手の話だと、善意と健気さがあれば幸せになれるというような、大人から見れば少々うさんくさい教訓がベースになっていることが多いような気がする。一方この小説では、結局のところコリーが這い上がれたのは(もちろん幸運な出会いには恵まれているが)彼女の知性と技術によるところが大きい。母親から教え込まれたキルト刺繍の技術、そして舅に教えてもらった読み書きの能力と詩を愛する感性、このふたつをよりどころに彼女は職を得て、評価されてゆく。「やさしいことはいいことだ」という教訓よりは、「勉強すれば役に立つ」という教訓を強く感じさせる児童小説って、珍しいといえば珍しいかも。

しかし後書きにもあったように、これが中世や近代ではなく、現代インドを舞台にした話だということには驚かされる。経済状況が絡んだ結婚、そして帰る場所をなくした未亡人たちが路上生活をしいられるという状況は、現実にあるらしい。まあ作者がどうも欧米人らしいので、これがどこまで現実に即した話なのかはちょっとからないけれど。