メトロガール

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海を失った男|シオドア・スタージョン

海を失った男 (河出文庫)

海を失った男 (河出文庫)

若島先生=ナボコフ研究というイメージがあったので、こういう作品を訳したり編集したりしているのはちょっと意外だった。でもウィキを読んでみると、囲碁やチェスや詰将棋の本を出していらっしゃって、SFやミステリとも造詣の深い、かなり懐の広い方だったのですね。

スタージョンは初読だったのだけど、思ったよりも精神的にグロテスクというか、気持ち悪い話が多かった。軽いタッチで書かれているのに、足元の板を剥いでみたらなにやらドロドロべとべとした、ヘドロかコールタールみたいなものがこびりついている小説群。「三の法則」や「そして私のおそれはつのる」のようなめでたしめでたし的な結末ですら、正直、いやいやそれはちょっとどうなのと首を傾げたくなってしまう微妙な後味の悪さ。ちなみに選者の若島氏がお気に入りとして挙げている「ビアンカの手」「墓読み」「海を失った男」の三作品が、確かに作品として出色であったように思う。

昨日書いた、本の読み方にも通じるんだけども、後書きで若島氏が、「海を失った男」を教材として用いた際に、学生の一人が「先生、この短篇、さっぱり何が書いてあるのかわかりませんけど。でも凄い」と言ってきた、彼のような人間こそ理想的なスタージョン読者でないかと思う、と書いていた。わたしが望む読書は多分、そういうものだ。