メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

散歩する惑星|ロイ・アンダーソン

散歩する惑星 愛蔵版 [DVD]

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しばらく前に「スウェーディッシュ・ラブストーリー」と「愛おしき隣人」を観て面白かったので、この作品もようやく。構想20年撮影4年ということで、ローテクながらも非常に丁寧に作られているのが画面からもわかる。最新作「愛おしき隣人」を観て新鮮に感じた、固定カメラでワンシーンワンカットの手法は、ここでもしっかり。どの場面でも奥行きを意識した構図で、カメラに近い場所で主要な事柄が起きている最中に奥の方、遠景でもなにやらおかしなことが起きているのが面白かった。

保険金目当てに自分の店に放火した男。長男はかつては詩を書いていたが、心を病んで入院し今はひと言も言葉を発しない。他にも、大規模リストラをする社長に、解雇された社員。道に迷った挙げ句見知らぬ人たちに蹴られる男や、電車のドアに手を挟んだ男。マジックは失敗し、マジシャンは笑われ客は大怪我をする。不倫中の看護婦は医者に「いつ奥さんと別れるの?」と迫り、かつての恋人の部屋の窓に向かいある男が呼びかける声を無視して、彼女は新しい恋人と甘い時間を過ごしている。白塗りの冴えない登場人物たちが、無表情に絶望を呟きつづける場面が延々と続く。彩度の低い画面に、漂い続ける不景気感。カウリスマキフィンランドだっけ、やはり不景気な映画ばかり撮っていたし、90年代はスウェーデンも景気悪かったんだなあと今更ながらに実感。

映画後半は、さらに不条理、非現実的なシーンがめくるめく。キリストが磔にされたオブジェで一攫千金をもくろんだり、幽霊に執拗に付きまとわれたり、生け贄の少女が断崖から突き落とされたりと、容赦ない。そんななか、代わる代わる呟かれつづける一節の詩からは、市井を生きる人々へのささやかな愛や希望が感じられ、僅かな救いとなっているように思えた。