メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

何かが道をやってくる|レイ・ブラッドベリ

何かが道をやってくる (創元SF文庫)

何かが道をやってくる (創元SF文庫)

序盤もたついたものの、カーニバルの場面から先、一気に引き込まれた。ふたりの少年と、厭世的で内省的な年老いた父親。やってくる邪悪なカーニバルの、怪物や魔女たちとの対決。幻想的で、スリルに満ちて(ホラー小説のように恐ろしい部分もあった)、希望が溢れている、そして何より文章が、これはおそらく原文も訳文も、詩的で美しい。

ジムとウィルというふたりの冒険と友情、どこか切なくなるような少年時代特有の感性ももちろん素晴らしかったけれども、これは、希望を失った壮年の男、ウィルの父親の物語でもある。メリーゴーラウンドは葬送行進曲を奏でながら回る。遊具に乗ったものは、一周するとひとつ年を取る。ときに葬送行進曲はさかさに奏でられ、メリーゴーラウンドは逆向きに回る。乗っているものは一周するとひとつ若返る。加齢や死はいつだって恐ろしいものだけれど、ひとの若さというのは肉体の年齢のみに寄るものではない。ウィルの父はそのことに気づき、また、笑うことこそがすべての邪悪を退けるのだと気づく。

奇妙な魔術師たちの引き起こす狂騒。「巨匠とマルガリータ」ではあんなに熱狂した魔術師たちに、こちらの小説では心底恐怖を感じてしまったのだから視点の据え方って面白い。