メトロガール

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10月はたそがれの国|レイ・ブラッドベリ

10月はたそがれの国 (創元SF文庫)

10月はたそがれの国 (創元SF文庫)

子どものころ、金の星社監修の「世界こわい話ふしぎな話」というアンソロジーがとても好きで、何度も何度も図書館で借りた。ポオやラヴクラフトや、今になればこの作家がこんな話を書いていたんだ、と驚くサキやモーパッサンゴーゴリーやホーソーンまで、豪華作家陣の不気味な話を子ども向けに書き下した作品集だった。この本を読んでいて、なんだかその頃の、得体の知れない恐怖に震えながら怖い小説やマンガを読んでいた頃、いつか来る世界の終わりや死を思い浮かべては眠れなくなっていた頃のことを思い出した。

10月はたそがれの国」というタイトルは、素晴らしい。しかしその語感から思い浮かべるノスタルジックなイメージと本書におさめられている作品群の持つ不穏で不安な空気とは、少し落差があるような気もする。

死や喪失に対する、漠然とした、しかし決して解決されることのない不安や恐怖。収録されている短篇の多くはそういった感情をテーマとしている。その漠然とした恐怖を、人はいろいろなものに転化する。それはときに「骨」だったり「風」だったりする。登場人物は、得体の知れない恐れを、他者からすれば一見理解できない対象物に投影するので、周囲の人間にしてみると彼らの思考は現実離れした、ほとんどパラノイアといっていいものである。しかし、漠然とした恐怖が、ふとした瞬間に現実となる。悪夢が、妄想が、夢の外膜を食い破って現実に飛び出してくる。そんな小説群。

それらはどれも、恐ろしくて美しい。