メトロガール

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終焉|ジョン・アップダイク

終焉

終焉

アップダイクをはじめて読むにあたって、邪道な作品を選んでしまったような気がする。現代アメリカを代表する作家というならばぜひ一冊は読んでみたいけれど、わたし、あまりがちがちのリアリズム小説って得意じゃないんだよなあと思い悩んだ挙げ句、この、アップダイクとしては異色(であるらしい)SFとマジックリアリズムのテイストを取り入れた「終焉」を手に取った。

米中戦争で核が使用された後の世界(2020年)が舞台。人口は減り、社会にも若干の荒廃が見られるものの、基本的には現実とそうかわりのない世界設定。金属生命体やふたつの月など、SFっぽいモチーフもでてくるものの、正直これらの設定は、別にあってもなくても大差ないようなものだった。主人公の元株式ディーラー、ベンが衰えつつある肉体や、死の気配に怯える、というのがこの小説のすべてで、壊れゆく世界や、不穏な出来事もすべて、ベンの抱える死と喪失への恐怖のメタファーといってもいいかもしれない。そして、小説世界や起こる出来事すべてが、ベンの妄想であるといってもいいのかもしれない。老いへの恐れからか、ベンは若い女性や、自らの性的能力に過剰な執着を示す。また、喪失のモチーフとの対比としてか、にぎやかに鮮やかに描かれる自然の、花々の描写は美しい。

盗まれたはずの調度品が、平穏な生活の中なぜかひとつひとつ部屋の中にもどってくる場面などは非常に面白く、全体的にも楽しんで、一気に読んでしまえる小説だった。しかし、これを読んでアップダイクの小説がいかなるものかをはかり知ることはちょっと難しいかもしれない。やっぱり、次は代表作と呼ばれるものを読んでみた方がいいのかも。