メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

TOKYO!(オムニバス映画)

混雑しそうな渋谷を避けて、滅多に足を踏み入れることのない池袋にて「TOKYO!」初日初回。東京を舞台に、海外の監督3人がそれぞれ短篇を撮るというオムニバス。フランスから、ミシェル・ゴンドリーレオス・カラックスが、韓国からボン・ジュノが参加している。わたしはカラックスのファンで、ゴンドリーの作品は何本か観ていて、ボン・ジュノはまったく知らない。一緒にいたRは、ゴンドリーとボン・ジュノを観ていて、カラックスは未見。予備知識ばらばらのふたりだったけれど、感想が割と一致したのが面白かった。

★「インテリアデザイン」ミシェル・ゴンドリー
わたしはゴンドリーの映像は割と好きなのだけど、映画としてはいまいち好きになりきれなくて、その理由は多分彼の映画から悪い意味での陳腐さが拭いきれないためなのだと思っている。PV監督として評価が高いゴンドリーなので、長編よりはむしろ短篇の方が上手いかも、と期待して臨んだものの、残念ながら今回も判定は微妙。むしろ、あの独特の映像すら失われてしまっているように思えた。若者の生体と東京暮らしの描写はやたらリアルで、終盤の、彼女に変化が訪れて以降は割と良かったけれど、日本人の若手監督のインディーズ映画と言われたら絶対にそう信じ込んでしまうであろう映画。もしかしたらこれは、わざと「日本映画風」のものを撮ろうとしているんだろうか。だったら脱帽。
ちなみに友人はしつこく「『兄貴、好きと言えなくて』(※劇中ポルノ映画館で上映されていたタイトル)面白そうだなあ、観たい、観たい」と繰り返していた。誰がゴンドリーにこんな入れ知恵したんだ(笑。

★「メルド」レオス・カラックス
カラックスが撮るだけで、ドニが走るだけで、銀座が、渋谷が、パリの街に姿を変えてしまう。
恥ずかしいしみっともないんだけど、それだけで胸が一杯で涙が出てきてしまった。ドニをこんなふうに撮れるのはやはりカラックスしかいない。下水を闊歩し、手榴弾を放り投げるドニの姿には、「ポンヌフの恋人」で地下鉄のポスターを燃やすアレックスを一瞬思い出す。「花と紙幣」だけを食べる怪人、メルドが花束を抱きしめて眠る場面は醜悪なんだけど美しすぎた。
純粋に短篇映画という視点でいえば、3本のなかで最も「かたちになっていない」作品。後半はめちゃめちゃで、カラックスの映画でこんなに笑ったことはなかったから、笑いながら、不安で恐ろしい気持ちにもなった。舞台である東京にも日本人にも一切媚びることも迎合することもなく、むしろそれらをあざわらうかのよう。後半は正直、何をやりたかったのかいまいちわからなかったんだけど、そういうところを含めて、やっぱりわたしはこの監督がとても好きだ。なんだか、ゴンドリーへの感想と比べて圧倒的に贔屓丸出しでごめんなさい。酷評の嵐だった「ポーラX」も大好きなので、本当にこれは映画の出来不出来でなく趣味の問題なのでしょうが。

★「シェイキング東京」ボン・ジュノ
映画の出来でいえば、一番完成度が高かった。文句なしのおすすめ。10年間引きこもっていた男を演じる香川氏は素晴らしく、蒼井優ちゃんも相変わらず神々しい可憐さと美しさ。設定とキャストと脚本が完全にぴったりとはまっていた。そして、ボン・ジュノ監督は感性が女子高生なんじゃないかと思うような、初々しくて素敵なラブストーリーだった。ただ、監督が竹中直人氏の大ファンだそうで、無理矢理にでも使いたかったのかな。彼の出演シーンと、その後のある設定一点は蛇足で、絶対ないほうがよかったと思う。

ちなみに「シェイキング東京」の蒼井優ちゃんの素晴らしさに、カラックスがボン・ジュノに嫉妬したらしいのだけれど、どう考えても「メルド」に蒼井さんを出す余地はなかったと思うので、嫉妬する前にまず己を省みるべきだと思います。