メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

パンク侍、斬られて候|町田康

パンク侍、斬られて候 (角川文庫)

パンク侍、斬られて候 (角川文庫)

読み終わるまではもう少しかかるかな、と思っていたら電車が止まってしまい思わぬところで読書時間が捻出されてしまった。で、読了。町田康の小説は、いろんなことの本質を極めてわかりやすく表現していて読めば読むほどため息が出るばかり。それは舞台が現代だろうが江戸だろうが同じことで、なんていうか、極端にぶれない人なのかもしれない。

「腹ふり党」の教義であるとか、登場人物それぞれのパーソナリティーだとか、笑いながら感心してしまう部分ばかりではありながらも、途中、盛り上がりに欠けるというか、小説としてはやや小粒な印象を受けていた。しかし、ラスト近く、一気に物語が転換する。「ええじゃないか」的な狂騒であり、荘厳な叙事詩のようでもあり、読んでいて頭が真っ白になった。オチは想定の範囲内だったんだけども、ラストシーンの澄み渡った感じは、例えるならば「八月の光」で再びリーナが世界へ歩み出した場面のような、そんな突き抜ける爽快さと明るさ。

ここまで馬鹿馬鹿しくも切実な小説を書いて、それでいて評価される純文学の作家というのは、他にあまり思い浮かばない。近いところだと筒井康隆なのかもしれないけども、筒井氏には綿密さや知力のバックボーンがある反面ここまで人を飲み込む言霊は備わっていない。なんていうか、やっぱり稀有な小説家なのかもしれないな。小説の中に突如として出てくる妙な歌、というのは奇妙なリズムと陶酔で人を物語世界に引き込むに有効なものなのかもしれない。安部公房「カンガルー・ノート」で三途の川の小鬼たちが歌う歌、ヴォネガットの「借りちゃった、あ、テント」。節がついているわけでもないのにやたら印象に残っている。

ちなみに本編に負けず劣らず、高橋源一郎さんの解説が素晴らしかった。久々にいい解説を読んだと思った。さてさてこの勢いで「宿屋めぐり」にいくか、並べてスタンバイ中の「デッドアイ・ディック」にいくかが悩みどころです。