メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

お豆腐屋さんのラッパ

朝、遠くでお豆腐屋さんのラッパが鳴っているような気がしたんだけど気のせいだろうか。子どものころからわたしの生活圏にそういった移動販売の類いはほとんどなく、せいぜいのところ、焼き芋のトラックを見かけるくらいだった。福岡ではじめて、リヤカーでわらび餅を売っているおじさんを見た。プラスティックのカップではなく、長方形の最中にわらび餅を乗せ、もう一枚最中を被せ、輪ゴムで留めていた。好奇心に駆られた友達が購入し、一緒に爪楊枝でつついた。ちなみに、移動販売のお豆腐屋さんには、実際には未だに出会ったことがない。

午後、散歩に出かけたら、カートを押しながら歩いている小さなおばあさんが、お蕎麦屋さんのあたりで立ち止まり、下を向いて何かに話しかけている。気になって通りすがり視線を下に向けると、お腹を出して猫が眠っている。とてもきれいな飼い猫で、隣にしゃがみ込むと薄く目を開け、顔を洗った。人に慣れているのか、まったく逃げようとはしない。


徒歩圏内にいくつか商店街があって、こういう環境に住むのもはじめてなので、物珍しくてよく歩き回る。少し離れた、賑わっている商店街では、食虫植物なんかも売っているお花屋さんがあって面白い。今日は一番ささやかな商店街を通り抜ける、ここは日曜日にはほとんどの店がシャッターを下ろしている。金物屋さんがあって、鮮魚店や青果店があって、駄菓子屋と豆腐屋がある。ベンチにおばあさんが座っている。隅っこには、今時見かけないくらい、店構えも、ショーケースの商品もレトロな感じのケーキ屋さんがあって、周囲に甘い匂いが漂っている。一度何か買ってみようと思っているのだけれど、なかなか踏み込めない。

帰り、猫はいなくなっていて、なんとなく空が暗くなりはじめていた。家に入って間もなく、盛大な雨音と雷鳴が聞こえはじめた。