メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

歌いながら駆け下りる、坂

ちょうどゆるい坂を下りきるあたりにわたしの住むマンションは建っている。住宅と、公共施設に囲まれた静かな場所だということもあってか、ここは特に自転車に乗る人にとっては「ふっと気持ちが開放される場所」であるらしい。

彼らは歌う。

気候のいい時期は、割と遅い時間まで窓を開けていたので、しょっちゅう見知らぬ人の歌声を聴いた。鼻歌であったり、熱唱していたり、大抵は、というか今まで耳にしたものはすべて(彼らに並外れて音感が欠落していない限りは)わたしの知らない歌だった。全然上手じゃないんだけど、可笑しいような微笑ましいような気分で、それらの歌を聴くことは嫌いではなかった。

最近めっきり窓を開けることがなくなって、歌声が飛び込んでくることもなくなった。窓が防音性に優れているのか、それとも寒くなると人は路上で歌わなくなるものなのか。ちなみに同じ過ごしやすい気候でも、歌が多く聞こえてくるのは春や初夏ではなく、残暑や秋だった。

髪を、うんと短くしようか。それとも今回は、前髪だけ短くするにとどめるかで、狂おしく悩んでいる。わたしは人生で、(幼少の頃を除けば)髪の毛が肩のラインより短かった時期が、半年くらいしかないのだ。切りたいんだけど、似合わない気がして、なかなか踏み出せない。でも、今回か、次回、年内には絶対切ろうと思う。