メトロガール

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子どもの悲しみの世界ー対象喪失という病理|森省三

子どもの悲しみの世界―対象喪失という病理 (ちくま学芸文庫)

子どもの悲しみの世界―対象喪失という病理 (ちくま学芸文庫)

読書に向かう気持ちが萎えがちなので、リハビリ的に棚の奥にある本を取り出している。

学生時代、この本を読む気になった理由は「子どもの悲しみの世界」というタイトルに惹かれてのことだ。フロイトの名は知っていたけれど、「対象喪失」という言葉は知らなかった。学術的なところからは離れたところにいるわたしにとってこういった本は、人の心のさまざまな色かたち、細やかな襞を感じるためのものでしかない。そして、いつも、哀しくもなるし、愛おしくもなる。

対象喪失」について書かれたこの本がとっかかりだったけれど、森さんというのはユング派の方のようで、河合隼雄さんほどではないものの、「ものがたり」を心理学的に解釈した本もたくさん出されていて、そんなところにも惹かれた。河合さんも、森さんもそうなんだけども、わたしが心理学者の書く本が割と好きであるのは、そこに対象への優しさを感じるからなのだと思う。逆に、精神科医の書く本はもう少し辛辣だったり、切り口鋭いものが多くて、ときに読んでいて苦しくなるものもある。これは、まったくいけないことではなく、臨床医というのは学者以上に厳しい現実と最前線で向かい合い、優しさや人間愛だけでは勤まらない故、ある意味冷徹ともいえる視点が要求されるのかもしれない。