メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

装丁物語|和田誠

装丁物語 (白水uブックス)

装丁物語 (白水uブックス)

和田誠、という名前を最初に意識したのは高校生くらいの頃だったか。わたしは当時、「ロッキンオン」や「スヌーザー」を読むタイプの学生だったので、流れとしては、友人に「トライセラトップスっていうバンドの和田唱って、有名なイラストレーターの息子なんだって」と言われたのが最初だったように思う。「週刊文春の表紙描いてるひと」と言われたとき、頭の中ではいくつもの週刊誌がこっちゃになって、すぐにイメージが浮かばなかったが、家の本棚を見てみると、星新一村上春樹吉行淳之介、つかこうへいなど、和田さんがカバーイラストを描いた本がたくさんあった。そういえば、その名前って……と吉行淳之介のエッセイをめくってみると、加賀まり子さんたちとともに、吉行氏の麻雀仲間として何度も名前が出てきていた。

その後名前を意識するようになると、イラストレーションの仕事の他に、ジャズや映画への造詣を活かしたエッセイや、映画監督をしていることなども見えてくる。ここ一年のあいだにわたしの本棚の一角を占めるようになってきたカート・ヴォネガットの多くも、和田さんが表紙を手がけている。にも関わらず、この本を読むまで「装丁家」をトップクレジットに持って来てもおかしくないくらい装丁の仕事をたくさんされていることを、わたしはまったく知らなかった。

「装丁物語」は、ところどころで技術的な話に触れながらも、基本的には今まで和田氏が装丁してきた本について「この本のこういう素敵なところを活かすよう、こんなふうに気を遣って装丁しました」ということが書いてある本だった。だから、中には膨大な本のタイトルが出てくる。和田さんの一番よく使う「ユーモラスなペン画+描き文字に色指定」という手法をカバーに持ってきている本については、書店で見かけた際にも「あ、和田さんだ」と思うのだが、意外なところでは、丸谷才一訳「ユリシーズ」なんかも和田さんのデザインだったりする。全然気づかなかった。子どものころ実家の本棚にあったので、読んでいた阿刀田高さんの「ギリシア神話を知っていますか」のシリーズも和田さん装丁だった。

和田さんは、本の内容を読んで理解し、本を好きな人間として装丁をされているんだということが伝わってくる楽しいエッセイで、これをきっかけに読んでみたいと思う本も、いろいろとあった。まだまだ敷居の高さを感じているのだけども、いつかジョイスを……!