メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

お財布を買い換える

二週間ほど前、雨の日曜日に表参道を歩いていて、ふと財布を買ってしまった。無加工のヌメで、揃いのパスケースも一緒に。

それまでわたしが使っていた財布は、黒いヌメ革で、GUCCIのものだった。この手のブランド品を自分で買うことはないし、いくつか手元にある鞄や靴も、あまり好きではないので滅多に使わない。ただしこの財布だけは別で、ちょうど9年半、もう角がすり切れて糸が出て、革が伸びてカードケースもゆるゆるになっているのに、使い続けた。

その財布は、わたしが二十歳になるときに姉がプレゼントしてくれたものだった。5万円前後という価格は、学生だったわたしには身近なようで身近でない金額で、「お姉ちゃんは仕事をしているから」と、感謝しつつもどこか当然のような気持ちで受け取った気がする。しかし、実際のところ当時の姉にたいした収入があったわけではなく、後になればなるほど「これはずいぶん思い切ったプレゼントだったんじゃないだろうか」と思うようになってきた。そして、少しずつくたびれてゆく財布をずっと使い続けるわたしを見るたび姉は「三十歳の誕生日にまた新しいの買ってあげるよ」と言った。

人前で出すにはちょっとよれよれになりすぎているとはいえ、あと半年が待てなかったわけではない。ただ、もうわたしもいい年齢で、姉とそんなには変わらない収入を得て自分で生活をしているわけで、また姉に奮発させるのもちょっと申し訳ないような気がしたのだ。一応お役御免となったGUCCIの財布は、貰ったときに入っていた箱に入れて、大事にしまいこんだ。

一緒に写っているマフラーも、同じく十年選手。根性なしで一度も編み物を仕上げたことのないわたしのために友人が編んでくれたもので、だいぶ毛羽だって毛玉もでてきているけれどまだまだ現役だ。色も長さも、完全には揃っていない編み目もなにもかもぴったりで、何よりこれはわたしのために作られたものだから、特別に大事にしている。