メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

小林カツ代の「おいしい大阪」

小林カツ代の「おいしい大阪」 (文春文庫)

小林カツ代の「おいしい大阪」 (文春文庫)

食いしん坊なので、食べ物の本は好き。レシピ本も見ていて飽きないけれど、どちらかといえばエッセイ的なもののほうをよく読む。食べることは生きるための行為でもあるし、文化的な行為でもあるから面白い。そして、食べ物関係のエッセイの書き手には、ただの食道楽もいれば、凄腕の料理人もいるし、いわゆる料理研究家もいる。この料理研究家というのは、料理の専門家であるくせに、たいていは他人に腕を振るうことを生業とはしていない(料理人上がりの人はある程度いる)。料理を研究とがいっても、学術的な肩書きを持つひとはほとんどいないし、レシピを考案するのに、それを店の厨房で自ら作りはしない。悪いとかうさんくさいとかではないんだけども、つかみどころのない肩書きのひとつだと個人的には思う。

今書店に並ぶ料理研究家の本は、レシピ集もしくは、「わたしの素敵なライフスタイルを披露」の系統がほとんどで、憧れつつも何とも言えないむずがゆさを感じる。その点このカツ代さんの本は、大阪での少女時代に好きだった食べ物のことを、人々や街にまつわる思い出とともに情感豊かに書いているので嫌みがない。戦中戦後の大阪の街で、商家の娘として育ったカツ代さんの生活は、ちょっとした昭和風俗史のようでそれだけでも面白い。また、結婚後東京に移り住んで驚いた食習慣の違いなどについても、実体験に基づいて細かに触れられているので興味深かった。

病み上がりで体重が落ちて体力もなくなったところに、おいしそうな話をたくさん読んですっかりおなかが減ってしまった。