メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

温泉とお風呂とわたし

両親ともに温泉地の出身だったため、わたしは温泉の魅力やありがたみに対して鈍感に育った。田舎に行けば、風呂を沸かすのが面倒だからと温泉に送り出される。それも、観光客が行くような小洒落た施設ではない、地元の人間が日常的に使う入湯料100円くらいの温泉。源泉掛け流しといえば聞こえは良いが、豊富なミネラルは湯船に石のようにこびりつき、蛇口を変色させていて、子どもの目には不衛生に映った。幼少のわたしにとって温泉というのは、炭酸泉の独特のにおいと、しなびた老人たちの裸体を想起させる辛気くさいイメージのものだった。
大学生くらいまでは、友人に温泉旅行に誘われても、わざわざ時間とお金をかけてそんなところに出かけることが不思議でしかたなかった。とはいえやはりひとは年をとるもので、あるときわたしは不意に、温泉の魅力に目覚めてしまった。きっかけもタイミングも覚えていないが、仕事を始めた頃だっただろうか、急に温泉に入りたくなった。今では田舎に行くたびにあちこちの外湯を回ることを楽しみにし(こぎれいな温泉もすっかり増えた)、行ったことのない温泉地を訪ねて行くことすらある。東京には温泉と呼べるものはほとんどないけれど、銭湯も好きなので、ときたま足を運ぶ。

そんなこんなでお風呂は好きなのだけど、毎日家で浴槽に湯を張るとなると、敷居が高い。一人暮らしのユニットバスには追い炊き機能もないし、仕事で遅くなってからのんびりと風呂を沸かして……という時間も惜しい。最近までわたしは、平日はシャワーのみ、休日のみ湯船に浸かる、という生活を送っていた。それが一変したのはひとえに「禁酒」のせいだったりする。

先月より家でお酒を飲むことを止めた。もともと飲まなければ飲まないで平気な性質なので、アルコールを摂取しないこと自体は特に辛くもないのだが、「帰宅後の気分転換」としての飲酒がなくなると何となく家に帰る張り合いがない。そこで、お酒を飲んでいた時間を入浴にあてることにした。ちょうど気温も下がってくる季節柄、湯船で体を温める習慣をつけるのも悪くはないだろうと思ったのだ。「今日は何を飲もうかな」と迷う代わりに「今日は何を入れようかな」と、入浴剤の種類に頭を悩ませてみる。のんびり湯船に寝そべって、精油でリンパマッサージの真似事もするようになった。するとなんと、肩こり冷え性、肌荒れ等、長いあいだ悩まされてきたトラブルが一気に軽くなった。もしかしたら禁酒のせいもあるかもしれないけども、むくみもなくなって、顔や脚もすっきりしてきた。というわけで、もうしばらくこの生活を続けてみようと思っている。ただし、浴室に本を持ち込むと風邪を引く危険性が高まるので、それは自らに禁じた。

ずっと、入浴剤はミルク系一辺倒だったのだけども、最近はMarks&Webのマンダリンのバスソルトをひいきにしている。香りがダントツにいい。体の温まり具合で選ぶならばツムラの「きき湯」。びっくりするくらい温まるのでお勧めです。