メトロガール

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幸運の25セント硬貨|スティーブン・キング

幸運の25セント硬貨 (新潮文庫)

幸運の25セント硬貨 (新潮文庫)

空港の売店で購入。キングを読むのは干支一周くらいぶりなので、すごくわくわくした。本書は、本国出版された短編集を日本で出版するにあたって二分冊にした、その二冊目。モダンホラーっぽいものから血みどろのもの、ちょっと不思議ないい話、など、キングの多様な作風がバランスよくアソートされている。いろいろなテイストが楽しめる反面、散漫な印象も若干。

わたしは初期〜中期の作品に慣れ親しんでいるだけに恐怖要素の強い作品が好きなので、絵の中の男が追ってくる「道路ウイルスは北に向かう」と、狂った給仕長が襲い掛かってくる「ゴーサム・カフェで昼食を」は特に楽しめた。

すごく久しぶりにキングを読んで感慨深かったのは、恐怖を感じるポイントが昔と変わってしまったことだ。昔のわたしなら、得体の知れない何かや、狂っている誰か、襲ってくる理不尽な暴力やスプラッター描写ばかりに恐怖心を書き立てられていたのだろうと思う。しかし、今回この作品集で一番嫌な、不安な気分になったのは、繰り返し出てくる「うまくいかない(もしくは壊れてしまった)夫婦」の描写を読んでいるときだった。別に配偶者がいるわけじゃないんだけど、なんだろうあのじっとりと嫌な感じ。化け物よりももっと身近な恐怖、こういう人と人の関係の嫌らしさをリアルに書くというところに、やっぱりキング・オブ・ホラーは伊達じゃないやと思ってしまう。