メトロガール

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20世紀の幽霊たち|ジョー・ヒル

20世紀の幽霊たち (小学館文庫)

20世紀の幽霊たち (小学館文庫)

作者のジョー・ヒルは、スティーブン・キングの息子だとのこと。まあ、当然と言えば当然なのだけど、作風は全然違う。

まず一本目の「年間ホラー傑作選」は割と王道のホラーで、多分収録作のなかで一番ダイレクトな不快感を与えてくるもの。作中であらすじだけが語られる物語が、ものすごく残酷で品のないサイコホラーなんだけど、面白くて、できれば完成した小説のかたちで読みたいと思ってしまった。で、そのままえぐいホラーで畳み掛けてくるのかと思うと、続く「20世紀の幽霊」は映画好きにはたまらない、映画愛に溢れたしっとりとした幽霊物語。かと思えば風船で出来た少年アートとの友情を描く「ポップ・アート」に、カフカザ・フライを掛け合わせてスプラッター仕立てにしたような「蝗の歌をきくがよい」と、毛色の違う作品がつぎつぎ飛び出し、まるで万華鏡のよう。

全体的に、ああ、このひと異形が好きなんだなーというのは強く感じる。あと、家族というものに対する深い愛情と、不安(こういうテーマを好むところはアメリカ的といえばアメリカ的)や、落伍者へ向ける視線の暖かさも、多くの作品に共通しているものだ。中でも「ポップ・アート」「おとうさんの仮面」「自発的入院」は、ホラーだとか幻想小説だとか文学だとか、そういうジャンル分けがそぐわない(というか不可能)タイプの、素晴らしい作品だった。わたしがこんなところで声高に言うまでもなくすごく売れている本らしいけど、この三作品のためだけにでも読む価値有りです。