メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ベンジャミン・バトン 数奇な人生

長尺だと聞いていたので、体調も万全に朝一番の回へ。フィッツジェラルドの短編は未読。

老人の姿で生まれ、赤ん坊に向かって成長してゆく男、ベンジャミン・バトンの人生を描いた映画。ベンジャミンと、彼が7歳(見た目は70歳くらい)の頃に出会ったデイジー(当時5歳)と、逆さまの成長をたどるふたりの困難な愛というのがお話の芯にあって、あとは周囲の人間の生き様や死が周囲を彩っている。何度も書いているように、わたしは「逆向きの時間を生きる恋人同士」という不可能な愛をテーマにした作品に根っから弱いので、本作品もすごく楽しみにしていた。でも、いざ観てみると期待していたベンジャミンとデイジーの関係よりはむしろ、それ以外のところが良かったので、ちょっと意外だった。長尺のクロニクルっぽい映画も好きなので、どちらかといえばそっちのツボにはまったのかもしれない。

老人の姿で生まれたベンジャミンが育てられるのが老人たちの暮らすホームだというのは、いい設定だと思う。本当の老人たちに囲まれて、外見は彼らと同じなんだけど中身は子どものベンジャミンがいろいろなことを学んでゆく序盤から、彼が家を出て船乗りになるあたりまでは、周囲のキャラも立っていて最高だった。だから逆に、ベンジャミンとデイジーの年齢が釣り合い彼らの恋愛譚がメインになると、急にハリウッドのおしゃれ恋愛映画みたいになってしまうのが妙な感じ。でも、ベンジャミンが子どもに戻るあたりからまたテンションがあがってくるので、最終的にはすごくいいものを観た気分で映画館を出ることができた。

ごくごく子どもの時代を除き、CGや特殊メイクを駆使して、ブラッド・ピットがベンジャミンを、ケイト・ブランシェットがデイジーを演じている。年齢差を出すのは女性の方が簡単なのか、ケイトの方が少女も老婆もはまっていて、ブラピはなんかちょっと笑っちゃう感じが残った。あと、40〜20くらいの間は顔があまり変わらなくて、ベンジャミンの若返り具合がわかりづらかった。ちなみにデイジーの幼少時代を、ダコタ・ファニングの妹が演じていたのだけど、理不尽なくらいかわいかった。老人のベンジャミンと幼女のデイジーの奇妙なボーイ・ミーツ・ガールは、本当に奇跡みたいなシーンだった。

全体の筋としては、ベンジャミンが人とは逆の成長過程を辿る、という飛び道具的設定を除けばむしろ淡々と平凡な物語で、だからこそ「数奇な人生」というのはベンジャミンのことというよりはむしろ、彼と、彼の周囲を生き死んでいった人々皆の人生のようにも思えた。