メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

怖いものはそんなにないけれど、最近はちょっと多め。

夜中に、冷えきって、疲れて帰ってからお風呂に入るときに、蛇口をひねって湯船に沈み込み、お湯の注ぎ込むごぼごぼという音を聴くのが好きだ。あおむけに近い格好で、目は閉じて顔の表面だけ水面に、耳を含め体のほかの部分はしっかり沈める。ゆらゆらして、顔だけひんやりして、深いところから夜の世界みたいな音が響いてくる。いろんなことを忘れることができるし、いろんなことを思い出すことができる。

午前三時に、ハチ公のところで待ち合わせをして、冬の、月曜日の早朝だったので嘘みたいにほかに誰もいなかった。スクランブル交差点の向こうから、好きな人が歩いてきたときのこと、ときどき懐かしく思う。顔を見るのなんか何度目だかわからないのに、初めてあったときみたいに嬉しくて、照れくさかった。今だったら、相手が誰であろうと、そんな真夜中がまんできず、帰っちゃうんだろうな。