メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ホルテンさんのはじめての冒険

ノルウェーのヒューマンドラマ。ノルウェー鉄道の勤勉な運転士ホルテンは67歳の定年を迎える前の晩のちょっとした出来事により、最後の乗務を欠勤。そして、今までのレール通りの人生から外れる小さな計算違いやおかしな出会いが重なったことをきっかけに、彼はひとつの「冒険」を決断する。

「酔いどれ詩人になるまえに」の監督が撮った作品だとは知らなかった。この映画含め、アキ・カウリスマキロイ・アンダーソンあたりの北欧監督は、センスが日本人と近いのかそれともただ単にベタなだけなのか、非常に笑いがわかりやすい。そして、登場人物が無表情であることが多い。ついでに犬がよく出てくる(これはカウリスマキだけか?)。この映画でも、仏頂面の登場人物が飄々と、妙な行動言動を繰り広げるローファイなユーモアに満ちていて、客席からはときおり大きな笑い声が上がっていた。確かに、ノルウェー鉄道の飲み会で行われる余興は最高だったし、マッチを何度もなくすおじさんや、路面凍結時のあれこれ、目隠しドライブから弟登場の流れあたりなんかも、すごく面白かった。ついでに犬も出てきたしね。あと「『ニッサン』が日本語だなんておかしい!」と登場人物が力説するシーンがあったり、飲んでいるウイスキーが「響」だったりと、日本人にはクスリとしてしまうシーン多数だし、音楽と映像もとても良かった。

日本では「70歳まで働ける社会」を目指す施策が遅々としたペースで進んでいるけれど、ノルウェー鉄道(当時は国鉄だったらしい)の定年が67というのには最初ちょっと驚いた。なのでまあ、主人公のホルテンさんも年齢的には高齢者の部類に入る。彼が面会に行く、おそらくは施設のようなところにいる母親は90近いのだろうか。高福祉で有名な北欧諸国だけども、こうやって労働人口を増やすことでなんとかやりくりしているのかなあなんて思ったりした。67歳になって、職業人生の終わりという外的な要因で変化を迫られたホルテンさんが、「冒険」により自らの意思でそれまでの人生、迷いや悔いを残してきたことに区切りをつけ、新しい方向に歩き出すというのは、来年定年を迎える父を持つわたしにとっても何やら他人事とは思えない。映画好きで犬好きの父にも、この映画はとりあえず薦めておきたい。

ところで本編とは別にふたつほど。その1、予告編「ダウト」がすごく面白そうだった。「この人が出ている映画はとりあえず観ておきたい」と思う俳優ナンバーワンが、ブラッド・ピットでもジョニー・デップでもなくフィリップ・シーモア・ホフマンだということは、年頃の娘としてはひとには言わないようにしている。次点がスティーブ・ブシェミだということも同様。その2、「ぴあ」の映画満足度調査に出くわした。これ、本当に映画館で調査していたんだーと感動しながらとりあえず採点に参加しました。万一紙面に載ったら洒落にならないので写真と名前は遠慮しておきましたが。かつて新聞の1面(大雪の日の街頭写真)と、タウン誌にうっかり載ったことがありますが、死ぬほど恥ずかしかったことを覚えています。