メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

人間的な、あまりに人間的な

日曜日に新宿のジュンク堂書店で文庫本の棚を見ていたところ、近くに立っている女の子が一冊の本を手に、隣の男の子へこんなことを話しかけていた。「こういう、説明がいっぱいついた本って、そのとき読む派? 後で読む派?」。要するに、本の注釈をその都度参照するか、最後にまとめて読むか、という趣旨の質問である。前衛的な物言いはともかく、その質問内容にはちょっと興味があったので耳を澄ましてみると、男の子は「俺、そのとき読む派」と答えた。そして「でも、あちこち見てるとなんかつまんなくなって、読むのやめちゃうんだよねー」と続けた。

女の子はきゃはは、と漫画のように笑いながら「マジー、わかるー、ウケるー」と言うと、ふたりで覗き込んでいた本を平積みの山に戻し、そのまま彼らは去って行った。最近の「ウケる」の用法は「かわいい」並みにキャパの広いものになっているんだなー、とその微妙なニュアンスに戸惑いながら、彼らは何を見ながらそんな話をしていたのかと、平積みの本を覗き込む。

人間的な、あまりに人間的な彼らが手にしていたそれは、ニーチェ著「ツァラトゥストラかく語りき」であった。

ちなみにわたしも「そのとき読む派」である。