メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

京都にいってきました

ちょうど仕事がひと息ついたこともあって、予定通り京都へ行ってくることができた。とはいえ直前まで忙殺の日々だったため、毎度のごとく下調べはゼロ。どこに行くか、何をするかなど一切決めないままに新幹線に乗り込む。すると、なんと通路を挟んで離ればなれになっていた母娘連れが、窓側のわたしに「席を代わってくれ」と言う。いかにも東京で買い込んできました風なブランドものの紙袋に、ばさばさまつ毛に濃い化粧、強い押しに圧倒されOKしてしまったものの、わざわざ海側の席を取ったのになあと次第に悔やまれてきて、鬱々としているうちに、昼過ぎ、京都についた。途中から雨が降り出していたので結局車窓の景色はないも同然だった。


雨はひどく外出も億劫で、仕事の疲れが溜まっている上に新幹線で眠れなかったこともあり、なんとホテルにチェックインするなりベッドに潜り込んでしまった。夕方から、一件用事があったので、それをすませ、結局一日目は何もできず終了。出不精の旅は大体いつもこんな感じでぐだぐだになってしまう。しかもAという場所に行かなければいけない用事だったのに、勘違いしてBという場所に行ってしまう。着いてから場所が間違っていたことに気付き、慌ててタクシーを拾った。とりあえず時間には間に合ったけど、こういうのは本当に気をつけなきゃいけない。わたしはとことん不注意な性質で、うっかり飛行機を乗り過ごしたことすらある。朝起きてからチケットを見たら、もう飛行機は飛んでいた。予約した便を勘違いしていたのである。

翌朝も雨は上がっていない。屋外、ことに庭見物などは無理だし、毎度毎度なんとかの一つ覚えのように通っている貴船神社も、この荒天ではとても無理だし、どうしようかなと思いながら宿を出る。宿の入り口で「外観が気にいらない」と凄い剣幕で従業員に食って掛かっている三十代くらいの女性がいて、怖かった。

乙女のたしなみ、というか早い時間から開いているところの心当たりがほかになかったので、散歩しながら京阪の駅まで行き、一乗寺恵文社を目指す。叡山電車のローカルっぷりには来るたび驚かされる。乗車ベルが鳴る中、おばさまの集団がドアが閉まらないように集団でブロックしながら大声で「ああ、山田さんが来てない」「山田さん早くー!」と改札に向かい叫んでいる光景がシュール。というかほとんどコントである。恵文社は言ってみれば「大型おしゃれ書店+雑貨店」で、ここだけでしか手に入らないものというのがそう多い訳ではない。しかし、数年前に、ここでディスプレイされていたのをきっかけにケリー・リンクを手に取り、それから欧米の女性作家にのめり込んだ経緯もあるので、もしかしたらまたいい出会いがあるかもしれないと期待して、ついつい足を運んでしまう。京都を代表する書店だけあって、わたしのような観光客も多いのか、雨の中、開店直後なのにお客さんはけっこう入っていた。そして今回わたしは、まったく予想しなかったこととして、運命的な南部鉄瓶と出会い、購入。まさかこんなとこで鉄の急須買って帰る羽目になるとは思わなかった。

京阪のる人おけいはん、の京阪電車祇園四条で降りたら雨が上がっていた。実は片手に傘を持った状態ではカメラを操作することができず、ここまで写真は一枚も撮っていなかった。こんなことなら、片手でシャッターの切れるD-LUXを持ってくれば良かったなあと少し後悔していたのだけども、ここにきてようやくレンズキャップを外すことができた。

  
 

八坂神社から、そのまま徒歩で南下。そして、到着してから気づいたのだけども、なんと国立博物館は休業中! 風神雷神が観たくてわざわざ来たのに、国立博物館で時間をとるだろうと、詩仙堂建仁寺清水寺も寄らずに来たのに、と肩を落としつつ、じゃあ、絵じゃない方の風神雷神を観ようと、お向かいの三十三間堂へ。

  
 

靴を脱ぐことを一切考えず、ブーツのみに防寒を頼っていたわたしは、短いスカートに薄手のタイツ。本堂の寒さは拝観中じりじりと足から上がってくる。しかも本堂内は脱帽なので、頭も寒い。しんしんと体中に冷たさを感じながら、しかしその冷たさすら忘れるくらいに圧倒される。十五年ぶりに来たけれど、記憶の中の本堂より、目の前にある光景の方が遥かに壮観で荘厳で、なんていうか、一種の完璧なものを見せられているような気がした。寒さのためじゃなく震えがくるような感じで、やっぱりこういうものはちゃんと守られていかなきゃいけないんだと強く思う。木造建築のなか、ケースに入っている訳でもなんでもなく、これらの像と同じ空気を感じられるというのもすばらしい。

以前バチカンで観た「ピエタ」はガラスケースに入っていた。酔っぱらいがビール瓶を投げつけたのをきっかけに、厳重に守られるようになったのだということだった(※これはわたしの記憶違いだったらしく、実際はハンマーで打ち付けたとのこと)。そして、じき本物はしまわれ、展示されるのは精巧なレプリカになるのだとも言われた。実際今「ピエタ」がどうなっているのかは知らないが、参拝客のマナーが美術品との距離を遠ざけることもあるのだと考えると、この無防備な木像を間近で眺めることができるのは、いろんな意味で良いことなのだと思える。わずかばかりではあるが、千手観音の修復費用にお金を入れてきた。

 

荒れ模様の賀茂川を越え、京都駅へ。博物館がお休みだったおかげで時間が半端に余ってしまったため、再び地下鉄に乗り込み四条方面へ向かう。廃校となった小学校を利用しているという京都芸術センターも、入ってみたいと思いながらなかなか足を向ける機会のなかった場所だ。

 

近代風の美しい建物の入り口には、小学校らしく二宮金次郎の像がある。内部もほとんどそのまま。教室だったところを制作室やギャラリーや、談話室として開放しており、運動場はテラスのようになっている。下駄箱を利用したフリーペーパー置き場や、二階には音楽室があるのか、ピアノの音が響いていた。テナントとして近辺に数店舗を構える前田珈琲が入店しており、レトロな雰囲気のなか、お茶を飲むこともできる。わたしもここでひと息、お茶とレーズンサンドをいただいた。

  
 

その後、近所の六角堂へ。鳩がたくさんいるので有名。大量の鳩は、豆をまくと争うように一気に羽ばたき、(白くないけど)ジョン・ウーの映画みたい。生け花元祖ということで、池坊の生け花ブロンズ像があったり、面白い置物?があったりと、全体的にユーモラスでかわいらしい雰囲気が漂う。

  
 

町家などの古き良き感じから、近代建築、すごくモダンな現代っぽい建物までいろいろあって、面白いなあと思いながら歩いた一日。しかし一番気になったのは「塔」と書いてあるマンション。あれは何だったんだろう。

 

麩まんじゅうと阿闍梨餅を買って帰るつもりが、ちょうど京都伊勢丹にイベントで、神戸の「グラモウディーズ」が出店しているのを発見。マカロンという、やたら甘く、妙な食感で、時にけばけばしく、壊れやすくしかも大きさの割に高いフランス菓子のことが大好きで、わたしは密かにこのお店のことを気にしていた。ティラミスやチーズケーキといった珍しいフレーバーを思わず買い込み、後で正気に戻って「そんなに甘いものばかり食べられないよな……」と、本末転倒にも和菓子を断念する羽目に。そして、いつものように「いかにもな駅弁」に憧れながらも、好き嫌いが多いため、結局いつものようにサバ寿司を買って帰りの新幹線へ。しかし、美味しいんだけど、多いんだよね。サバ寿司、ハーフサイズで売ってくれないかな。

 

そんなこんなで、次は絶対に国立博物館の開館スケジュールを確認してから出かけようと誓った京都一泊二日でした。