メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

謎の「高崎カッパピア」

この間、とあるビルの最上階でおこなわれた会議に出席した。東京タワーの展望台が同じくらいの高さにあり、レインボーブリッジからお台場まで見渡せる絶景に目を奪われていると、上司が「僕の小学生の遠足は、東京タワーだったなあ」と懐かしむように言った。遠足で東京タワー!「さすが東京生まれですね。わたしなんて近所の山ですよ」とわたしは答える。山でなければ、河原だったっけ。

その流れをひきずって、昼食時に、子どもの頃遠足でどこに行ったかという話になった。たいていは予想通りで、青梅出身の上司は「高尾山」、千葉出身の男の子は「マザー牧場」と答える。ところが、群馬出身の女性が聞き捨てならない言葉を口にした。
「高崎カッパピア」

その場にいた全員が一瞬動きを止めた。「は?」と聞き返すと、彼女はもう一度、明瞭に言った。「え、高崎カッパピア」。その聞き捨てならない単語について問いつめたところ、「高崎カッパピア」は群馬県高崎市にある遊園地であるらしい。「カッパ」の名称は、彼女曰く「プールがあったからかなあ?」とのことで、さらに浅草花やしきとどちらが規模が大きいか訊ねたところ「花やしきに毛が生えたようなもの」だという答えが返ってきた。そんな妙な名前の遊園地、行ってみたいに決まっている。

怪しげなネーミングにすっかり心を奪われたわたしは、今日、同業他社との懇親会で向かいに座った方が群馬出身だと聞くなり、この話題を持ち出した。「高崎カッパピアってご存知ですか?」「知ってますよ」、これもまた即答だったが、彼の話は以前聞いたものとはずいぶん違っていた。彼は「花やしきに毛が生えたようなもの」という表現を一刀両断した。「毛なんか生えてないっすよ。花やしきほどもないですよ。それ、ずいぶん誇張されてますって」。どうやら「高崎カッパピア」は花やしきより小規模な遊園地であるらしい。そして彼の話によると、高崎市はカッパで有名(?)であるため「カッパピア」という名前が付けられたもので、園内にプールがあることとはなんの関係もないらしい。

ますますカッパピアに興味を持ったわたしは、帰宅して、その名をWikipediaで検索してみた。そして、三たび驚いた。なんと、「高崎カッパピア」はすでになくなっていた。いや、なくなっている、なんてものではない。業績不振により2003年に閉園したカッパピアは、取り壊されることもなく廃墟となり、犯罪の温床となり社会問題化。さらにその後火災により全焼し、現在は行政だか第三セクターだかが土地を買い上げ公園化する計画が進んでいるというのだ。「カッパピア」という能天気な名前に似合わない悲劇的な末路に一抹の哀愁を感じながら、やっぱり一度行ってみたかったなあとしみじみ思うのだった。