メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

春がくる

先週だったか、外出中に「外務省の桜は、もう咲いているね」と言われ顔を上げた。寒桜以外で今年目にした最初の桜だった。

ずいぶんぬるい日で、あれ以降暖かい日が続き、おかげで朝は床を離れることができないし、休日などひねもすのたりのたりと眠って過ごし、夕暮れ時にようやく街へ出かける有様。春は心地よさ以上に、得体の知れないおそろしさを持っていて、それはなんだか、凍らせていたものが溶けて、どうしようもなくぐずぐずになってしまう感じと似ている。昨年は転居と新しい環境の慌ただしさに圧され感じなかったこのおそろしい季節が、今年はやたらゆっくりと、高い粘度でしのびよる。四季の中でもっとも暴力的なのは間違いなく春であると思う。

今日は久々に息が白く染まり少しだけ春を忘れることができたけども、どうせまたすぐにやってくる。そして、ぐずぐずに身を腐らせるような春がまっさかりになるのはわたしが生まれた季節。「恋で死ぬ」とうたわれた季節。本当にそんなもので死ねるならば本望なんだけど、わたしはもう、うさぎは寂しさのせいで死んだりはしないということだって知っている。