メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

線香くさいシャンプー

朝、髪を洗おうとしてシャンプーのボトルが空であることに気づいた。そういえば、昨日使い切り、空いたボトルをすすぎ、逆さにしておいたのだった。詰め替えパックの封を切って中身を移し替える時間が惜しいな、と思ったところで、頂き物のシャンプーがあったことに気がついた。ロクシタンのシャンプーとコンディショナー。泡立ちもよく洗い上がりも気持ちいいし、髪も良い感じに仕上がった。大満足、といいたいところだけども、ただひとつ、このシャンプーは「線香の香り」がするのだ。

フランス人が日本の線香を知るはずもないので、多分これはグリーン系のなんらかの香りなのだろうけど、日本人のわたしにとってはどう考えても線香。しかも異様に香りの持ちが良い。コロンなんてすぐ飛んじゃうのに、なんでシャンプーの香りがこんなに持つんだろうと不思議に思えるくらい、一日中頭を動かすたび、ふわりと線香の香りが鼻をくすぐりつづけた。別に嫌いな香りではないけども、頭からこのにおい漂わせているのはどうなのかなあとちょっと不安になる。

香りというのは主観に左右されるものだから、香水などの使い方もすごく難しい。わたしにとってシャネルの5番は「おばあちゃんのにおい」だし、極端な例を出せば、腋臭の親を持つ子がそれを「おかあさんのにおい」だと思い特に嫌悪感を持たずに育った、という話を聞いたこともある。母はわたしに向かいよく「赤ちゃんみたいな、ミルクのにおいがする」と言うが、それは母がわたしのことを未だ赤ん坊だと思っているからだ。友人が「わたし、虫によくたかられるんだよね。腐ったバナナのにおいがするからだと思うんだけど」とこぼし、反応に困ったこともあった。

わたしはもともと香料の類いが苦手だった。大人になるにつれて、いいにおいがする人を素敵だなと思うようになってきたけども、未だに香りを身につけるのは得意でない。シャボンの香りのコロンか、バラの練り香水。これがわたしの持つすべて。そしてこれからしばらくは「線香のにおい」がわたしの香りである。ある意味夏先取りなのかもしれない。と、自分に言い聞かせてみる。