メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ミルク|ガス・ヴァン・サント

70年代サンフランシスコでゲイをはじめとするマイノリティの人権問題に取り組んだ、ハーヴェイ・ミルクの物語。これもすごく良かった! 久々にガスの映画でストレートな熱さを感じたんだけども、それが全然暑苦しくなくて、気持ちいい。これはショーン・ペンをはじめとする役者陣の好演のたまものという気もする。

ゲイであることを隠してウォール街で働いていたハーヴェイは、若い恋人との出会いをきっかけに新たな生活をはじめようとする。サンフランシスコのカストロ通りに移り住んだ彼は、小さなカメラ店を開き、そのうち店にはマイノリティの若者たちが集まるようになる。ちょうど当時のアメリカでは、いったん各地で認められた「ゲイ公民権」に逆風が吹いており、そんな現状を打破するためにハーヴェイはサンフランシスコの市政委員(日本でいう市会議員みたいなもの)目指す。何度も選挙に破れるものの、徐々に支持者は増えてゆき、小選挙区制の導入もあり、ハーヴェイはついに1978年市政委員に当選する。同性愛者の教師を解雇できる、という法律「提案6号」への反対キャンペーンなど精力的に動き、徐々に成果をだしてゆくハーヴェイだが、同年、凶弾に倒れる。

ハーヴェイ以外の人物の背景についても、きっちり伝わるように作られていて、まず人間ドラマとしてすごく良くできていた。もう一点、この映画がいいなあと思ったのは、「市政」という決して大きくはない、けども政治としての機能はおおむね備えている適度にコンパクトな器のなかで、きわめて判りやすく「政治」というものが描かれていたことだと思う。マイノリティ(=ゲイ)の生きづらさを解決したい、という思いが政治に向けられ、彼らの利益を目指した団体ができるところから、その団体がどのように代表を政治の現場に送り込み、どのように要望を叶えてゆくのか(票の駆け引きなんかの泥臭い場面も描かれている)。圧力団体の発生から、その力が増すことによりイノセントな活動が決してそれだけではありえなくなってゆく部分までほのめかされている。ハーヴェイという明確な争点を持つ政治家と、そうでないダン・ブラウン、という対比も良かった。大選挙区制では勝てないハーヴェイが、小選挙区制ではなぜ勝てるのか。特定集団の利益を目指す人間が政治に介入することの功罪は、など、中学生あたりの政治の授業に使ったっていいくらいきれいな論点ばかり並んでいるので、政治入門という頭で見ても、面白かった。

しかし、この映画のショーン・ペンは、ものすごくキュートだった。ガスは少年をキュートに撮るのがものすごく上手くて、当然この作品でも若者たちは素敵に撮られていた。ディエゴ・ルナなんかめちゃくちゃかわいかった。でも、彼らすべてが霞むくらいキュートな、年齢的にはおっさんであるショーン・ペン。わたしはもともとショーン・ペンってけっこう好きで、彼の撮る陰惨な映画なんかも割と観てるんだけど、「ミルク」を観て「けっこう好き」が「すごく好き」になってしまった。あれだけ魅力的で、しかもそのキュートさが「おっさん的なキュートさ」ではないというところ、そんな雰囲気を出せてしまうのは彼の人柄なのかそれとも演技力なのか。すばらしかったです。