メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

グラン・トリノ|クリント・イーストウッド

午前中に「バーン・アフター〜」を観て、昼過ぎに「グラン・トリノ」を観るためにピカデリーに戻ったら、朝エスカレーターで前後に並んだおじさんがまた目の前にいた。ちなみにわたしは、せっかくの試写会を仕事でふいにしたという遺恨があるので、並々ならぬ熱意で公開初日を迎えた。

素晴らしいとしかいいようがない映画だった。気持ちはあふれてくるのに、わたしの言葉では逆にこの映画の素晴らしさをどんどん損なってしまいそうで、どうしたらいいのかわからなくなってしまう。何にせよ、イーストウッドの集大成であることは間違いない映画で、彼がかつて演じた、アメリカンヒーロー、信念と正義感に基づいて銃を撃ち続けてきた男の晩年がそこにはあった。彼が撮った映画でかつて、(主人公の男を演じたのは彼ではなかったが)守りきれなかった少年が、彼の助けによって強い大人の男になろうとしている姿がそこにあった。

イーストウッドが苦虫を噛み潰した顔で「むうー」とうなるたびに、劇場のあちこちから笑い声が起こり、笑ったり緊張したり泣いたりきっと皆たいへんだったんじゃないのかな。この作品や、「硫黄島からの手紙」「父親からの星条旗」などで、20世紀後半の戦争を、実際に体験してきた世代として描いたイーストウッド。時代の体験者としてこれらの時代を描ける人間は今後どんどんいなくなっていく。それでも、次の世代は湾岸戦争を描くだろうし、9.11を描くだろうし、他にも数限りない戦争、内戦、テロ、暴力を体験者として描いてゆくんだろう。