メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

ベルサイユの子|ピエール・ショレール

ホームレスのニーナは、生活を立て直したい気持ちはあるものの政府の保護政策には絶望と反感を抱いており、幼い息子エンゾとともに街をさまよう日々を送っている。彼女はさまよい込んだベルサイユの森で、ダミアンと名乗るホームレスと出会う。彼は森の中に小屋を造り、生活をしている。子どもを思って生活を立て直せと説教するダミアンに反発するニーナ。そして、翌朝ダミアンが目を覚ますと、ニーナの姿は消えており、そこには息子エンゾだけが残されていた。身元の手がかりはなく、エンゾは自分の姓すら知らない。子どもを押し付けられたことに憤るダミアンだが、仕方なくエンゾの面倒をみはじめ、彼らの間には次第に親子にも似た絆が生まれ始める。

もっとハートフルな話をイメージしていたのだけども、画面の暗さといい、ダミアンの妙な理屈っぽさといい、落とし方といい、久々にフランス映画っぽいフランス映画を観たなという気分になった。ダミアンは(おそらくは麻薬で)服役後、無職から浮浪者と、就労経験のない男として描かれ、またホームレス化の一因として強権的な父親への反発が示唆される。一方のニーナは、家庭に疎まれ、セクハラ等職場トラブルで仕事を転々とした挙句ホームレスとなっている。そしてふたりともエンゾという子どものため、子どもの未来のために、生活を立て直そうとする。

あまり書くとネタばれになるので割愛するが、ドロップアウトしている人間が子どものために社会に戻る、というのはとてもまっとうな動機で、同じ動機によってなんとか生き直そうとするダミアンとニーナの姿はいい対比になっていた。エンゾ役のマックス君は、水が顔にかかったときの表情が素晴らしくて、というかあれは演技ではなく本当に嫌なんだろうな。すごくいい表情だった。ギョームも、ポーラXでは(いい意味で)ただキラキラしてるだけのお坊ちゃんな感じだったのが、苦節を味わっていい渋みがでてきていたので急逝は本当に残念。

イギリスのケン・ローチといい、ベルギーのタルデンヌ兄弟といい、フィンランドカウリスマキといい、失業者や浮浪者を描く映画はけっこう前から作られはじめ、未だに後を絶たない。ヨーロッパの失業率の高さ、不景気も相変わらず。

※5/16からシネスイッチにて、ギョーム追悼上映で「ランジェ公爵夫人」と「ポーラX」がかかるそうです。やった!