メトロガール

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犬たち|レベッカ・ブラウン

犬たち

犬たち

レベッカ・ブラウンは過去数冊読んだものの、苦手だった。もともと(特に女性らしい感性で書く)女性作家というものがあまり得意でなく、理由はおそらく同族嫌悪とか自意識の衝突云々とか、そういう低いレベルでの抵抗感だった。不思議とある時期から苦手意識は和らいでゆき、いまでは一部女性作家が「とりわけ好き」に分類されていたりするのだけども、レベッカ・ブラウンに対する相容れない気持ちは、かつて女性作家全般に対して持っていたものと似ている。わたしには、レベッカ・ブラウンの作品が、大好きなケリー・リンクエイミー・ベンダーと決定的にどう違うのかよくわからない。よくわからないのに苦手だからむずむずして、気持ち悪い。そして、よくわからないからこそ、何かのきっかけですごく好きになれるんじゃないかと思って、手に取ってしまう。

「犬たち」は、ある女性の生活に犬が入り込んできたことをきっかけとする連作集。当初は犬の美しさを愛し、庇護する女性だが、いつしか犬は不遜になり傲慢になり、彼女と犬との立場は逆転する。どんどん増えてゆく犬で彼女のベッドは満たされ、彼女は犬たちに命令され、監視され、罵倒され、傷つけられ、辱められ、守られ、癒される。犬たちを憎み、また愛する。

読みはじめて最初のうちはやはりむずむずして、やっぱり駄目だったかーと思いながら、とりあえず最後まで読んでみようとページをめくりつづけた。ところが、「5 ずきんー忍苦について」。これがわたしの大好きな「童話改変もの」(赤ずきんの改変)で、内容的にもすばらしかった。あとはもう、彼女と犬との濃密な関係のなかに入り込んで、するすると最後までいくだけ。ぺしゃんこになった彼女を毎朝犬たちが膨らませるエピソードなんかもすごく素敵だ。

愛玩、ということばはただ愛し可愛がることだけを意味するのではなくて、そこには確たる上下関係や所有/支配関係がある。そういう、犬と人間の関係をやや逆転的に書いているだけでなく、ここでの犬は家族であり、友人であり、恋人であり、彼女自身であり、そういった親密圏のすべて(さらには自身まで)を投影している。増えゆく犬たちのときに暴力的でときに優しい行動に、彼女は闘い、自分自身の何かを救い出す。寓意性に満ちたタイトルに見合うメッセージを各章から読み取れたかといえばちょっと難しかったりと、完全に消化できたわけではないけれど、とりあえずは、ようやくレベッカ・ブラウンを「良かった!」と思って読み終えることができたそれ自体がとても嬉しかった。