メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

宇宙のパイオニア

表紙に「宇宙」と書かれた図鑑は、怖くてあまり好きじゃなかった。なぜならそこには「ブラックホール」について書かれているから。なんだかわからない(この年になってもわからない。本を読もうとしても物理学センス皆無なので理解できない)黒い星雲みたいなものが、なんでもかんでも吸い込んでしまうのだという。その中はきっと果てしない「無」なのだ、いつかわたしの住むこの世界がブラックホールに飲み込まれてしまうとしたら! そんなことを考えると眠れなくなった。幼少の時分「ブラックホール」「ノストラダムスの大予言」「キョンシー」はわたしにとって三大恐怖だった。今でも、宇宙のことを考えるのは怖い。プラネタリウムで宇宙の歴史、宇宙の未来なんてプログラムを観てしまうと、夜はうまく眠れない。

しかし、恐怖の対象であった「宇宙」のなかで唯一わたしの興味を引いたものがあった。いわゆる「パイオニア探査機の金属板」というやつで、皆さんご覧になったことがあるだろう。これ。

無表情で素っ裸のくせに、なにやらポーズだけ愛想のいい男性と、その隣でやはり無表情で素っ裸でなぜか「やすめ」の姿勢をとっている女性の姿が、やたら印象的だったのである。

これは宇宙探査機「パイオニア10号・11号」に取り付けられた金属板で、万が一探査機がどこかの星の知的生命体に見つけられたときに人類の自己紹介をする、という目的のもとに作成されたのだという。男性の愛想のいいポーズは要するに、トラルファマドール星の使者が携えていた「よろしく」のようなものなのだろう。あとの記号は多分、地球の地図だと思う。「ここからきました、こんなやつです、よろしく」といういたくシンプルなメッセージには、詰め込めるだけ詰め込んでみました的なボイジャーレコードなんかより、個人的には好感を持っている。ちなみに交信は途絶えたものの、パイオニア10号、11号は今も宇宙をどんどん、地球から離れながら漂っているらしい。

しかしこの金属板、子供心に壁画のような巨大なものをイメージしていたのだけども(そんなわけない)、実際は16×22cmくらいのコンパクトなサイズ。遠くからじゃ、よっぽど視力のいい宇宙人でもなきゃ見えないね。