メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

縞模様のパジャマの少年|マーク・ハーマン

はじめて行く劇場は、伊勢丹お向かいのユニクロ隣。恵比寿に行こうかなーと思っているうちに、こちらの映画館の上映スクリーンが大きい方に変更になったのでコレ幸いと足を運んだ。

主人公のブルーノは8歳の少年で、彼の父はナチスの将校である。ブルーノは父の昇進に伴い、田舎へ引っ越すこととなる。友人たちと別れ、同世代の子どももいない田舎暮らしはブルーノにとっては退屈そのもので、家に出入りする恐ろしい軍人や、大好きな冒険の本を禁じる家庭教師も好きになれない。ブルーノは窓の外に見える鉄条網の向こうにある「農場」にいる「農夫や子どもたち」に惹かれるようになる。しかし彼らの奇妙な点は、全員が同じ縞模様のパジャマを着ていること。屋敷の下働きをしている老人も同じパジャマを着ているが、彼は元医者だったのだという。医者がなぜ芋の皮むきなんかしているのか、ブルーノは解せない。そしてある日鉄条網の近くに寄ったブルーノは、「農場」で働く同い年の少年と出会い、友達になろうとする。

子どもの友情を扱ったナチスもので、原作は岩波のジュヴナイルというので、ハートフルでセンチメンタルな話を想像していた。加齢現象により日々涙もろくなっているわたしは上映前、同行の友人に「ハンカチ忘れちゃったよー、泣いちゃいそうなのにー」と言って馬鹿にされたが、泣くどころか、泣く隙もない凄い映画。あくまでフィクションであり、脚本としてはかなりおおざっぱというか、現実離れしたものではなるのだけども、その分展開はものすごくて、ラスト近くはあまりの緊張と恐怖に、ずっと肘掛けを握りしめていた。

「衝撃のラスト」を宣伝文句にしているようなので内容には触れないけど、とにかく「戦争って誰も幸せになれないんだ」という当たり前のことをしみじみ感じる、テーマのはっきりしたいい映画だったと思う。ナチスを含む、戦争ものの映画や本に触れるたび、個々人はそう悪い人でも残酷な人でもないのに、なんでこうなっちゃうんだろうといつも歯がゆく思う。ナチスの兵士だってほとんどは多分、家では良い夫で良い父親で、シチュエーションによっては逆に、虐げられるひとを救ったり守ったりするに違いないのに。でも、誰かが「ユダヤ人って嫌だよね」と思っていた気持ちが、ここまで大きなことになってしまう。何かが間違って、そういう世の中の空気とか流れができてしまい、ああいった惨劇が起こることが本当に怖い。

暗いことばかり書くのもなんなので、明るい部分について付け加えると、この映画は子どもの描写がとても生き生きしていてよかった。ベルリンで、ブルーノと友達が遊ぶシーンの「飛行機ごっこ」や「戦争ごっこ」のトランスっぷりは、荒井良二さん言うところの「馬鹿のスイッチ(なにかツボを押さえると、抑制の利かないハイテンションな馬鹿になって妙なことをやってしまう、小学生くらいの男の子に特有の現象)」がオンになった状態をかなりリアルに再現していたので、馬鹿になった男子好きのわたしとしてはたまらなく嬉しかった。どこの国の子どもも、両手を水平に広げて「ブーン」って、やるんだなあ。感慨深い。