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メトロガール

あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?

一緒に旅に出たいねと

よしなし

Rと旅行に行きたいなあと思うようになったのは、数ヶ月前。15年もの付き合いで、そういえばわたしたちは一度も泊まりがけの旅行に行ったことがない。互いの家に泊まることは何度もあったし、修学旅行のときはロンドンでもローマでも仲の良い3人で同室にしてもらった。日帰りで遠出をしたこともある。それでも泊付きの旅行をしないままできたのは、お互いまとまったお金を融通することが難しい時代が長かったこと、研究や仕事で忙しかったことなどが理由なのかもしれない。

ようやく互いに経済的なある程度の安定を得たこと、わたしが東京に戻り頻繁に会う機会を持つようになったことで、互いの世界に対する感覚にきわめてズレが少ないことを再確認したことなどから、漠然と「Rと海外に行けたら楽しいな」と思うようになった。しかし2人とも忙しさは変わらず(というか前以上に多忙であり)何よりRは新婚さんであることから、実現性は低いだろうとわたしは勝手に決めつけて、その希望については口を閉ざしていた。だから、昼食の最中にRが遠慮がちに「台湾でも韓国でもいいから、一緒に行ってください」と言い出したときに、わたしたちが同じタイミングで同じことを考えていたことを知って、思わず笑い出しそうになった。

「アジアでもいいけど、もしスケジュール取れるようだったら、ドイツあたりに行かない?」とわたしは言った。「いいよ、ウィーンとかプラハもいいよねえ」という返事に、ふと不安になって訊ねる。「でもさ、忙しそうじゃん」「大丈夫だよ」「赤ちゃんできるかもしれないし」「できないって!」と、トントン拍子に話は進み、来年はふたりで欧州にでむくことになりそうだ。

友達との旅行は楽しいながらも、どこか気を遣ったり、遠慮しあったりしてしまう。そういうちょっとした気遣いも旅行の醍醐味ではあって、嫌いではない。その点Rとは、まったく気兼ねなく、同じものをおいしいと思い、同じものを興味深く思う。受けるインスピレーションは倍加し、足りない知識を充足しあうことができるので、友達同士とも家族とも違う、ちょっと不思議な感じ。

現実としてはお互いやっぱりすごく忙しい。本当に旅行、行けるのかな。行きたいな。でも、わたしが思ってるのと同じように向こうも思ってたってことだけでも、なんかもう満たされちゃうな。